【授業の目的】
イワン・ツルゲーネフの3番目の長篇小説『その前夜』(1860)は,私の見立てでは彼の最高傑作のひとつで,19世紀ロシア文学の円熟期を彩る作品です。様々な国や地域が絡み合うこの作品には,古代ギリシア以来の西洋文化の歴史的遺産と当時の世界情勢が反映しており,「つれなき美女/宿命の女」やポジティヴ・ヒーローといった,当時の文学的話題にも事欠きません。物語がクライマックスを迎える「魔法の街」ヴェネツィアは,のちにわが国で『ゴンドラの唄』が生まれる舞台となりました。この授業では,ツルゲーネフの知られざる名作『その前夜』を様々な観点から取り上げ,詳しくお話しして行きます。
【授業の到達目標】
【授業の到達目標】 『その前夜』の精読を通して, 0)小説の読み方を学ぶ 1)ツルゲーネフの小説の特徴を理解する 2)ロシア文学と外国文学(西欧文学)の関係について知識と理解を持つ 3)複雑に絡み合った当時のヨーロッパ諸国の社会的・文化的関係を理解する 4)ロシア人とロシアの社会・文化について知識を得る
【授業概要(キーワード)】
ツルゲーネフ(トゥルゲーネフ) ロシア ブルガリア トルコ ギリシア ヴェネツィア スキアヴォーニ 音楽 魔法 アンテ・フェストゥム カルペ・ディエム つれなき美女/宿命の女 ロマン主義 ポジティヴ・ヒーロー 『ゴンドラの唄』 芸術座
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:1~25% A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:1~25%
【科目の位置付け】
この授業は主に『その前夜』をめぐる考察を通してロシア文化についての知識と理解を深めるものである。学部・コースのポリシーにそいつつ,「グローバル化の進展に対応した迅速さと正確さをもって、必要な情報を収集・分析」する力と「豊かな人間性と社会性」を涵養する。
【SDGs(持続可能な開発目標)】
01.貧困をなくそう 04.質の高い教育をみんなに 08.働きがいも経済成長も 10.人や国の不平等をなくそう 16.平和と公正をすべての人に
【授業計画】
・授業の方法
資料や映像を駆使しながら普通にどんどん講義します。疑問に思ったことはなんでも質問してください。
・日程
1 ガイダンス/はじめに 2~14 『その前夜』の読み方(解説) 15 まとめ ※途中,以下のようなトピックスを取り上げる予定: ツルゲーネフの生涯と作品(概観) エレーナとロシア文学における女主人公の系譜 ブルガリア人インサーロフの謎 余計者とポジティヴ・ヒーロー 目と口:視点と語り手 音楽の力 ギリシア・モチーフ 《アンテ・フェストゥム》的時空間 《カルペ・ディエム》の主題 「つれなき美女/宿命の女」とロマン主義の影 魔法の街ヴェネツィア: スキアヴォーニとスラヴの影 ウィリアム・トレヴァー『ツルゲーネフを読む声』 わが国における受容① 五七居士(佐波武雄)『あらしの花 美さほ草紙』 わが国における受容② 芸術座の『その前夜』劇と『ゴンドラの唄』
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
まずは講義内容を理解するよう努めてください。分からないことがあれば質問してください。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
特に指示のないかぎり,予習は必要ありません。図書館で関連する本を探したり,紹介された映像作品を見てみましょう。
【成績の評価】
・基準
以下を満たしていることを合格の基準とする。 1 ロシア文化について興味を持ち,その諸相について理解を深めている。 2 授業内容を正確に理解し,自分の言葉で説明できる。 3 授業に積極的に参加し,それについてきちんと自己評価できる。
・方法
授業参加:60点+レポート:40点 授業参加は授業後に提出してもらうコメントの書き込み(質問やコメント等)を評価します。レポートはロシア文化についての知識・理解を測りつつ,着眼点と独創性,表現力を評価します。
【テキスト・参考書】
原則としてテキストは指定せず,適宜プリント等を用意します。詳しくはガイダンスにおける説明や,授業途中での指示にしたがってください。い ずれにしても,授業開始前に取りそろえていただくようなものはありません。
【その他】
・学生へのメッセージ
私(担当者)にとって最後のロシア文化論になるだけでなく,ロシア文化論自体にとっても最後の授業になります(来年度からは開講されません)。そこで今回は,私が長く追いかけて来た作品を取り上げることにしました。『その前夜』について私が知り得た/理解した/考えたことをすべてお話ししようと思います。
・オフィス・アワー
授業時間外にみなさんの質問に答える「オフィス・アワー」は,相沢研究室(人社3号館8階)において,原則として火曜・水曜・金曜の昼休み(12:15~12:45)としますが,これに限らず在室している時は随時対応します。また,会議や出張等で不在にすることもあるため,確実に面談したい場合は事前に予約をお願いします。連絡先は、初回の授業でお知らせします。
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