【授業の目的】
競争法とは、「市場の失敗」に競争政策の観点から対応するための政府介入の根拠となる法律群の呼び方です。日本では、競争法の中核となる法律として独占禁止法(独禁法)があります。この科目では、独禁法を素材に、世界の競争法に共通する原理原則を学びます。たとえば、企業は自由に合併して良いように思われますが、企業合併が独禁法によって禁止される場合もあります。しかし、なぜ企業合併が禁止されるのかに関する詳細な理屈はあまり知られていません。また、最近ではFacebookやGoogleが競争法による規制介入を受けていることがしばしば報道されていますが、これらの企業が介入を受けるのはなぜか、よく知らない人も多いのではないでしょうか。 この科目では、アメリカやEUの現状も紹介しつつ、上記のような疑問に答えられることを目指し、日本の独禁法の主要規定を網羅的に理解することを目的とします。
【授業の到達目標】
1.競争法の全体像を把握したうえで、独禁法の主要な規制の内容とその経済的な背景を説明できる。さらに、競争法がどのような理屈に基づいて各行為を規制しているかを理解することができる。【知識・理解】
2. 独占禁止法の規律の根底にある倫理観・公平観を理解したうえで独禁法に関わる事案を読むことができる。【態度・習慣】
【授業概要(キーワード)】
競争政策・競争法・独占禁止法・経済法・企業結合規制・産業組織論・ゲーム理論
【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
A-1.ミニッツペーパー、リフレクションペーパー等によって、自分の考えや意見をまとめ、文章を記述し提出する機会がある。:26~50% A-2.小レポート等により、事前学習(下調べ、調査等含む)が必要な知識の上に思考力を問う形での文章を記述する機会がある。:26~50%
【科目の位置付け】
本科目は、独占禁止法に関わる専門知識の体系的な習得を通じて、社会の複雑多様な問題を法的観点から論理的・批判的に深く考察し、問題解決の方向性を示す力を身につけることを目標として編成された科目である。(人文社会科学部総合法律コースのカリキュラム・ポリシー)
【SDGs(持続可能な開発目標)】
01.貧困をなくそう 05.ジェンダー平等を実現しよう 08.働きがいも経済成長も 09.産業と技術革新の基盤をつくろう 10.人や国の不平等をなくそう
【授業計画】
・授業の方法
オンラインで開講します。 講義は、パワーポイントを利用した解説動画を配信するかたちで行います。 なお、一部の回では学習した知識を使って執筆するミニレポート課題の提出を求める場合があります。ミニレポートは受講者数に応じて、学期末に一回のみ100点満点の期末レポートを実施するか、期間中に3から5回、複数回のミニレポートの合計点をもって成績評価をするかを適宜決定する。
・日程
1. 競争法の概観(競争法は何を規律しているのか、法の歴史と機能) 2. 独占禁止法の全体像(目的規定と主要規定の概要) 3. 企業結合規制(概要、規制根拠、制裁) 4. 企業結合規制(一定の取引分野の画定) 5. 企業結合規制(競争の実質的制限) 6. 企業結合規制(経済分析の利用) 7. 不当な取引制限(概要、規制根拠、制裁) 8. 不当な取引制限(ハードコアカルテル) 9. 不当な取引制限(非ハードコアカルテル、公共の利益) 10. 私的独占(概要、規制根拠、制裁) 11. 私的独占(排除型私的独占) 12. 私的独占(支配型私的独占) 13. 独占禁止法の国際的適用(国際協力、域外適用) 14. 事業者団体・事業法と独禁法(概要と意義) 15. 競争法1のまとめ
【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
講義動画は原則として2~3週に一度まとめて更新します。動画と事前に配布するスライド、指定の教科書を利用して、ミニレポート及びレポート課題に答えられるように学習してください。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
講義で取り上げる各行為がなぜ競争法上問題視されるのかという観点から、行為が市場に及ぼす悪影響、行為が規制される理由を軸に理解しようとすることが競争法の知識習得の近道です。各講義の予習はテキストの該当箇所を読んでおくだけで十分ですが、復習では、講義で扱った概念をご自身の言葉で説明できるかどうか振り返りながら、テキストや講義資料を見返してください。ご自身の言葉で説明できるようになるまで復習することが望ましいです。わからなければ教員に質問してくださっても結構ですし、参考資料としてあげた文献を適宜読むことも理解を深めるうえで役立つと思います。
【成績の評価】
・基準
競争法の基礎的な知識が習得できているか、新たな事案に直面した際に競争法の法的評価枠組みにあてはめた検討ができているかを軸に評価する。ミニレポートについては、講義で扱った新たな知識を用いて論理的な帰結を導き出せているかどうかも評価する。(知識の応用・論理性)
・方法
ミニレポートないし期末レポート100%。定期試験は行わない。 期限を過ぎての課題提出は一切認めず、代替的な課題を出す等の措置もとりません。(大学が認める特殊な事情がある場合は除く)
【テキスト・参考書】
[テキスト] ・川濵昇ほか『ベーシック経済法(第5版)』(有斐閣、2020年)
[参考書] ・泉水文雄『経済法入門』(有斐閣、2018年) ・大橋弘『競争政策の経済学』(日経BP、2021年) ・金井貴嗣ほか編『経済法判例・審決百選(第2 版)』(有斐閣、2017 年) ・Einer Elhauge and Damien Geradin, Global Competition Law and Economics (2d ed. 2011).
【その他】
・学生へのメッセージ
競争法は経済学的な理論や政策との密接な関わりのなかで法的な評価枠組みを形成してきた非常に独特かつエキサイティングな法領域です。ぜひ、一緒に奥深い競争法の世界を探求しましょう。なお、事前に履修しておく必要の科目や必要な前提知識は一切ありません。 ただし、競争法1では独禁法の主要規定のうち、企業結合、私的独占、不当な取引制限を、競争法2では不公正な取引方法を中心に学ぶため、両科目を受講することが望ましいです。 最後に、独禁法の分析は産業組織論(ゲーム理論)の分析と深く関連しているため、経済学を専攻する学生の履修も歓迎します。
・オフィス・アワー
相談・質問は適宜メールで受け付けますが、希望があれば適宜日時を相談のうえ、希望の日時にZoomを利用して質問や相談を受け付けます。
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