授業実践の記録・分析と校内研修
 Recording and Analysis of Classes in the Lesson Study
 担当教員:江間 史明(EMA Fumiaki)
 担当教員の所属:大学院教育実践研究科
 担当教員の実務経験の有無:
 開講学年:1年,2年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:  科目区分: 
【授業の目的】
授業記録は、授業の事実をそのまま写し取るものではなく、記録者が自らの問題意識によって発見し、切り出して構成するものである。事実の記録とその意味の割り出しは同時に進む。この意味で、授業を記録し分析する力量は、授業を見る力量と支え合う関係にある。本授業は、ストップモーション方式の授業分析法を中心に学ぶ。授業から記録を作成・分析する演習を行うことで、授業分析法を活用できるようにする。

【授業の到達目標】
1 授業ビデオを活用したストップモーション方式の授業記録を作成できるようになる。
2 授業記録作成の実践的意義を理解できるようになる。
3 校内研修に授業ビデオを活用する諸方法を理解し、その活用をリードできるようになる。

【授業概要(キーワード)】
授業分析、教室談話、ストップモーション方式、授業リフレクション、校内研修

【学生主体型授業(アクティブラーニング)について】
C-2.事前学習(下調べ、調査等含む)をした上で、プレゼンテーションを行い、互いに質疑応答や議論を行う機会がある。:76~100%

【科目の位置付け】
教職に関わる高度な専門性の基盤として設けられた5領域の共通科目、「教科等の実践的指導方法」に関する授業科目の一つであり必修である。

【SDGs(持続可能な開発目標)】
04.質の高い教育をみんなに

【授業計画】
・授業の方法
〇まず、授業研究の理論と歴史について概観する。
〇実際の授業分析にあたっては、ストップモーション方式の授業分析法を中心とする。これは、言語情報だけでなく、非言語情報や状況の描写をも記述し、記録の途中に適宜、記録者の分析コメントを挿入するものである。実際の授業を受講生全員で参観し、ビデオに記録する。授業者をまじえたビデオを用いた検討会のあと、その授業の記録作成分析演習を行う。
〇連携協力校の授業研究会に参加し、校内研修における授業ビデオの活用と記録作成分析について学ぶ。
〇最終レポートを作成、受講生全員で読み合うことで、各自の洞察をより深める機会とする。
・日程
第1回: オリエンテーション/講義のねらい及び進め方/導入8分間の記録と分析
第2回: 資質能力ベイスの授業への転換とは?『教科の本質から迫るコンピテンシー・ベイスの授業づくり』第1章と第2章を検討する。
第3回: 「出来事」として授業を見るとはどういうことか?/稲垣忠彦、佐藤学『授業研究入門』を検討する。
第4回: 「省察」とは何をすることか?/同上書を使い、「反省的実践」概念を学ぶ。
第5回: 授業参観とビデオ記録/授業を附属小学校で参観し、ビデオに記録する。
第6回: 授業検討会/第5回で記録した授業をビデオで再生しながら、授業者をまじえてストップモーション方式の検討会を行う。
第7回: 附属中学校の公開授業研究会に参加し、授業の記録と分析、事後研究会での授業検討を行う。
第8回: 附属小学校の公開授業研究会に参加し、授業の記録と分析、事後研究会での授業検討を行う。
第9回: 記録作成分析演習/各自が第5回の授業の記録作成と分析を行う。ビデオを再生しながら各自の記録を全員で検討。授業の前半を扱う。
第10回: 記録作成分析演習/検討を続ける。授業の後半を扱う。
第11回: 教職専門実習Ⅰ(前半)での授業実習を素材に記録と分析を行う。
第12回: 教職専門実習Ⅰ(後半)での授業実習を素材に記録と分析を行う。
第13回: これまでの授業とコンピテンシー・ベイスの授業の違いを考える。『教科の本質から迫るコンピテンシー・ベイスの授業づくり』第3章から第7章を検討する。
第14回: 授業分析と学校経営の理論研究/中原淳、金井壽宏『リフレクティブ・マネジャー』を使い、実践とその省察を学ぶ。第2~4章
第15回: 授業記録作成分析の「ふり返り」/最終レポートをまとめ、各自のレポートを読み合い、検討する。

【学習の方法・準備学修に必要な学修時間の目安】
・受講のあり方
個人ないしチームでの事前準備の作業に積極的に取り組んでほしい。映像などの個人情報の扱いについては、十分留意すること。
・授業時間外学習(予習・復習)のアドバイス
次回までの文献ないし作業の課題に取り組むこと。一つの事例で学んだことを、これまでの自分の実践経験と結びつけて考察すること。授業外学修時間の目安は、1コマの授業について、予習準備90分、復習90分です。

【成績の評価】
・基準
C(合格に必要な最低限度)基準:
学部卒院生:授業の事実をもとに、教師と学習者の思考をたどる詳細な授業記録を書ける。授業を記録する意味を説明できる
現職院生:授業の事実をもとに、教師と学習者の思考を解釈し意味づけた授業記録を書ける。授業記録をもとに、校内研修を行う意味を説明できる。
・方法
 各回の授業に各自が提出するレポートについて、下記の点を評価する。
・ 授業分析と省察の理論的特質及びコンピテンシー・ベイスのカリキュラムの特質と課題(40%)
・ 共通参観授業で 作成したストップモーション授業記録と分析(12%)
・ 授業エピソードの取り出しと分析レポートの考察(附属小中公開研、教職専門実習Ⅰ)(32%)
・ 最終レポート(ふり返り)における気づきと考察(16%)

【テキスト・参考書】
授業で使用するテキスト
稲垣忠彦・佐藤学『授業研究入門』岩波書店、1996年
中原淳、金井壽宏『リフレクティブ・マネジャー』光文社新書、2009年
奈須正裕、江間史明編著『教科の本質から迫るコンピテンシー・ベイスの授業づくり』図書文化、2015年
参考書
小笠原喜康・片岡則夫 『中高生からの論文入門』 講談社現代新書 2019年
奈須正裕『「少ない実数で豊かに学ぶ」授業のつくり方』ぎょうせい、2021年

【その他】
・学生へのメッセージ
授業を印象ではなくて、子どもの思考の事実にもとづいて考えるようにしてください。
・オフィス・アワー
前期火曜、後期水曜の9:00-10:00,地域教育文化学部2号館の江間研究室

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