障がいを持つ学生の学習支援に関する研修会を開いてみて
近年、障がいを持った学生の入学が増加しているという。私の在籍する短大にも、以前、聴覚に障がいを持つ学生が在籍していたことがあった。そのときには、ピアヘルパーに詳しい学内の教員が学生とともにノートテイク(要約筆記)の講習会に参加して、それを大学に持ち帰って学内での研修会を開いたり、支援計画書の様式を作成したりして、学生支援の体制が整えられていった。また、身体に障がいを持つ学生が入学すると、階段や廊下に手すりがつくなど、
学内のバリアフリー化も少しづつ進んだりもした。しかし、その後、支援を申請する保護者や学生がいなくなると、全学で支援する仕組みを持続させる意識も薄れていったように思う。
平成28年4月から、障害者差別解消法に基づいて、国公立の大学では、合理的配慮の不提供の禁止が法的義務となり、適切な対応が求められるようになった。本学でも、支援が急増しており、学習支援への取り組みを全学的に行う必要性がでてきた。
そうしないと、また、一部の熱心な教員だけの動きにとどまるか、担当の学科や部署が個別に対応するだけで済まされてしまい、合理的配慮が提供できなくなる可能性があるからである。
ただ、具体的に学習支援といっても、どこまでが必要な支援なのか、どのような支援が必要なのか、戸惑う教員も確かに多かった。また、教育支援だけでなく、学生生活支援、キャリア支援との連携も構築しなければならず、まず、FD研修会で学習支援に関する研修会を行おうということになった。
講師には学内の教職担当で、発達障害の自立支援を専門とされる先生にお願いした。学生のメンタルヘルス研修会は毎年開いていたが、遅ればせながら、学習支援については初めての試みだった。
研修会の内容はとても興味深く、発達障害の人にとっての授業の見え方を、実際に参加者が体験する形で進んだ。そこであらためて、教員にとっては当たりまえにみえる教授方法が、障がいを持つ人びとにとってはまさに「障害」でしかないこと、障がいを持つ学生の学習支援について考えることは、学ぶ権利をいかに保障するか、という根源的な問題につながること、に気づかされた。いつも、当たりまえを疑うのが大学で学ぶ学問だよ、と言っている私が、今までの教え方そのものが当たりまえでないことにハッとして、反省した。新鮮な発見と好奇心が湧く、楽しい研修会となった。
これを機に、学習支援の重要性についての認識を教職員の間で、共有してもらえれば、無理を言って研修会をひとつ増やした意味はある、といえればいいけれど……。