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 筑波技術大学 :巽 久行 


『挑戦する情報保障授業』

 私が勤務する大学は聴覚・視覚に障害を持つ学生のみを受け入れる国立大学で、 所属は視覚に障害のある学生が学ぶ情報システム学科である。私が着任した2002年は法人化前の短期大学で、開学が1988年であるから今年で32年目の若い大学である。 設立時の先生から、どのような分野の学科を開設すべきかの議論があったと聞いたが、学生が卒業後に新たな職域を開拓できるのは情報であるとの決断で今日に至っている。 昨今の卒業生の就職状況を顧みて、その選択は正解であったと思う。

 学科の学生定員が10名にも拘わらず、凡そ12名の教員がいるので、各学年の学生一名には必ず教員がアドバイザとして就いている。 他の大学からすると何とも贅沢な学生指導になるが、各学年の約三割が全盲で、それ以外は強度の弱視であることから、担当する一名の卒研指導学生でも多くの時間を要する。 通常、新任の先生には障害の軽い学生が割り当てられるので、着任した私の最初の卒研生は弱視であった。今でも鮮明な記憶にある出来事として、 文字を24ポイントに拡大した資料を渡して説明している最中に、学生が理解しているのかをふと見たところ、彼が資料を逆さに持って紙に眼をつけて視ていた姿が衝撃として残っている。

 授業では板書もパワーポイントも使えないので、言葉のみで説明するラジオのアナウンサーに近い。勤めて18年になるので情報保障に慣れてきたものの、 分かりやすい教育とは何かという課題を常に突きつけられている。現在、2年生の一名に全盲で重度の難聴学生がおり、学科開設以来三人目の盲聾状況なので日常会話は指点字である。 しかし、授業は集団教育なので、学生の脇に2名のパソコンノートテイク(以下,PC通訳と記す)が付いて,ネット経由で連係しながら教員の説明をPCに入力し、 学科で開発したソフトでリスト形式に点訳した文章を点字ディスプレイで読み取れるようにしている。教員の説明がリスト形式に整理されるので、自分のペースで点字を読み進めることができ、 また、彼が読んでいるリスト箇所は大型ディスプレイで教員が把握できるので、質疑応答もリアルタイムに可能である。

 基本的に学生は構内の寄宿舎に入居しており、授業資料等は教員が学内サーバーにおくので、教室での授業中のみならず寄宿舎からでも24時間、 すべての資料にアクセス可能で課題も随時提出できる。盲聾の彼も寄宿舎に入居しているが、緊急時に備えて非常灯の光に反応して腕時計が振動する機器も貸与している。 国内のみならず国外の国会議員や視覚障害教育に関心ある人達が視察に来られるので、もし機会があるならば是非とも、我々が挑戦する授業の見学をお勧めしたい。


   
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