『改組』
『模範解答ありませんか?』という問いかけを受けることがある。鶴岡工業高等専門学校では平成27年4月に旧来の4学科(機械、電気電子、制御情報、物質工学科)構成から、
創造工学科4コースへと改組したことに伴って、創造工学科に160名の学生を受け入れて第1学年にて旧来の工学科の基礎部分を体験する創造基礎実習という科目設定を導入して、
1コース当たり6週間をかけて実施し、それぞれのコースの特徴を見極めてもらい。第2学年進級時に4コースのいずれかに配属するというカリキュラムを実施している。
今年度改組後の第1期生を送り出す時期となり、大きな変革の結果を振り返る時期となっている。
冒頭の言葉は、私の担当する講義の区切りごとに実施している小テストの際によく耳にするフレーズである。講義資料の例題、
各単元の区切りごとに基本・応用問題を配布して実践力を高める試みを行っているが、その際には模範解答を配布するようにしている。これ等の資料を活用しながら学習を行ってくれていれば、
問題なく解ける小テストなのであるが、学生からは冒頭のフレーズを問いかけられることが多い。受け身の「習う」がメインで、なかなか自ら「修める」という
習慣が身に付いていなくなっているように感じる今日この頃である。目覚めて(気付いて)ほしいなという思いから、『創造工学科って大変だよね。既存の知識を活用すればいいだけなら
ハードルは低いかもしれないけれども、新しい技術や考え方を探り出す事って、大変な事だよね。』などと声をかけているのだが、あまり気にしてくれてはいないようである。
私の力不足と反省する日々である。
部活動やロボコン、さらに海外留学やCO-OP教育など多様な選択肢があるがゆえに、自分が求めるものが分からなくなっている、あるいは決めかねて漫然と日々を過ごしている
学生も見受けられるような気がしている。時代は昭和から平成そして令和に代わるにしたがって、主体的に取り組む姿勢の差・意識の差が拡大してしまっているのかもしれない。
選択肢が多くなっていることによる一つの弊害なのかもしれない。
前述の学科改組の中で、これまでにないような想定外の事象も起こっている。私の所属する機械コースに配属された女子学生の人数が増えているのである。学科改組前の機械工学科40名での入試では、
第1志望で受験を希望する女子の人数は多くて数名。0名という場合も珍しくなかったのであるが、現在の5年生は3名、年ごとに増えて2年生は10名となっている状況である。
募集要項や入試関連資料では伝わらなかった事が、創造基礎実習などの講義科目を通じて認知されたものなのであろうかは分からないが、女子学生の増加の一助になっているのであれば幸いなことであると思ってる。
改組による変化が今後工学に対する認識のハードルを下げることにつながれば、なお幸いである。