今年2020年は新型コロナウイルス（COVID-19）が猛威を振るい、緊急事態宣言の発令、外出自粛の加速によって、多くの生活者が不要不急の外出を控え、自宅待機を余儀なくされました。
企業ではリモートワーク導入といった働き方の見直しが始まり、各家庭においては３密を避けるために日用品をオンライン購入に変えるなど、私たちの生活は大きく変化しました。
教育現場への影響も大きく、日本の大学の約9割にあたる930校がコロナウイルスの影響で授業を休止したといいます（文部科学省,5月13日）。
こうした厳しい状況のなか教育の質を担保しようと、ICT（情報通信技術）を活用した教育環境の整備がハイスピードで進められてきました。
本学においても前期全科目を遠隔授業で実施する決定がなされ、講義の準備はもちろんのこと、学生のWi-Fi環境、アクセスの集中によるシステム障害など、次々と発生する問題に全職員で対応し学習環境を整えていきました。
筆者自身は、慣れないツールの活用と準備時間不足による不安を感じながら遠隔授業をスタートさせました。
周囲の教員仲間や受講者の学生に助けられ、遠隔授業ならではの教育効果や面白さも感じられるようになってきました。
その一方で、看護学実習や看護技術科目など病院施設や学内でなければ学習目標の到達が難しい科目について、遠隔でどのように学ばせるかといった大きな課題が残りました。
看護師教育は、2022年に保健師助産師看護師学校養成所指定規則が改正、施行されます。
今回の改正の中にも「看護基礎教育において情報通信技術（ICT)を活用するための基礎的能力やコミュニケーション能力の強化」がうたわれ、ICT教育の必要性が協調されています。
看護教員は、看護実践の基盤となる力を学生に付与する責任と義務があります。
今回の経験を通して、ICT教育、活用力に関する能力を獲得していくことは当然ですが、「カリキュラム設計」、「シラバス設計」、「教授法」、「授業評価」といった授業デザインの基本要素に戻り授業を構築することの重要性を改めて認識できました。
また、ひとつの方法に囚われず、柔軟な思考と発想のもと新しい看護教育方法を検討していく必要があると強く実感することができました。
