リレーエッセイ
本学看護学科の学生は、ほぼ全員が看護師国家試験を受験します。
看護師国家試験を受験するためには、臨床実習が必修科目となっています。
私の専門とする母性看護学の臨床実習では、出産後に入院中の母子への看護も学びます。
そのため、5人程度の学生が1グループになって教員引率の下、産科病棟に出向きます。
学生一人一人が1組の母子を受け持ち、病棟指導者と教員の指導の下、看護を展開するのです。
ある時、いつものように学生とともに産科病棟に出向いたところ、今まさに出産を終えて分娩室から病室に移動する方がいました。
それは、数年前の卒業生でした。
卒業以来の再会が彼女の人生の喜ばしい一大イベントに重なりとても感動を覚え、また成長した彼女を目の当たりにして感慨深くもありました。
そして、彼女は後進のために学生が受け持つことを快く受け入れてくれました。
しばらくして病室に伺うと彼女は、大学時代の授業資料を取り出しました。
分娩の経過に関する授業資料でした。
私は、卒業して数年たっているのに授業資料をきれいに保管していることに驚くとともに、なぜ病室に授業資料があるのだろう、と不思議に思いました。
すると彼女は、「これは、先生の授業資料です。
授業の時には不思議に思っていた妊娠での体の変化が自分に起こって、本当だと思いました。
初めての出産にお守りとして持ってきました」と、学生と私に話してくれました。
本学では、授業評価を各科目の最終日に実施しています。
この授業評価を励みに、あるいは落ち込みながらも改善点を工夫して毎年の授業をバージョンアップしています。
この地道な努力による授業が学生一人一人の中に息づき、学問としての学びを日常生活の中で活用してくれることを願っています。
今回ご紹介したエピソードは、私が最も励まされ嬉しかった授業評価です。
今後も、関わった学生の中に息づく何らかの学びを残すために精進したいと思います。