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 明海大学外国語学部 :荻原 稚佳子 

 コロナ後の授業に向けて

昨年から、コロナ禍において授業形態は大きく変わりました。ただ、この1年があったことで、さまざまなFD研修を受け教師側のICT活用能力は大きく向上し、授業形態の多様化が進んだとも言えます。対面授業も遠隔授業もそれぞれに良さがあり、また、対面授業の方が優れていると言われている側面においても、遠隔授業でもできることがかなりあると気づかされました。一般的には対面授業のほうが双方向のコミュニケーションに優れていると考えられていますが、内容ややり方によっては、Zoom等での同期のやり取りだけでなく、非同期の遠隔授業でもかなり有効な双方向コミュニケーションができることもいくつかの授業で実感しました。
 たとえば、異文化間教育に関する授業を担当していますが、これまでの対面授業では各回のテーマについて事前にテキストを読んできて、担当学生が内容確認の発表をし、学生全員で自分の体験などを情報交換し、そのテーマに関する事象を振り返り、分析、考察して理解を深め、異文化間で起きる事象や理論について身近な体験に反映してもらっていました。こうした活動を遠隔でどうやって行おうかと、初めはかなり不安を持っていました。
 遠隔非同期で授業を行うようになってからは、事前に授業範囲のテキストを読み、各回のテーマに関するキーワードについて小テストに答えてもらいました。その後、オンディマンドの動画配信により講義を行いました。その視聴を終えたら、学習した内容について振り返りノートにまとめ、そのテーマに関係する自己体験を思い出して書いてもらい、自己分析して今後どのように解決していきたいかを考える課題を出しました。
 実際に始めてみると、当初の不安は吹き飛びました。まず、振り返りノート作成の課題を出したことで、全員が自分の意見を発信することになりました。履修者が多い授業なので、対面では、どうしても発言する学生は限られてしまい、発言を促してもなかなか発言しようとしない学生がいました。それが、オンラインの課題にすることで、全員が何かしらの体験を書き、自分の考えについてノートを通して発信することができたのです。
 そこで、毎回、その中からいくつかの体験談と考えを次週の遠隔授業において匿名で紹介し、教師からもコメントをするようにしました。すると、意外でしたが、これまで発言しないことが多かった学生も、そこで取り上げてもらおうとしていい意見を書いてくるようになり、紹介した内容や教師コメントに対する質問や意見も出てくるようになりました。それらの意見は、例年の教室での発言以上に深く考えさせられるものが多く、回を追うごとにより多くの学生が熱心にその欄を書くようになっていったのです。全員が深い理解と自分自身のこととして各テーマを考えるという高次認識の面では、これまでの対面授業より成果があったと感じました。
 この活動などを通して、遠隔で行うほうが何度も講義コンテンツを視聴し、自分のペースで学習できるという利点だけでなく、双方向の意見交流もやり方によっては有効に行えるということを学生は実感したと思われます。
 近い将来、コロナ禍の脅威から大学教育も解放され、対面授業に戻る日が来ると思います。その際には、以前と同じ態勢に戻ってしまうのではなく、対面と遠隔、課外と課内、同期と非同期のブレンディッド・ラーニングを行うようになるでしょう。その際に、教師は遠隔で学ぶことの意義や理由を学生に説明することは当然必要だと思いますが、対面で行うことの意義や理由も説明が必要となると思われます。直接コミュニケーションできる楽しさをしみじみと感じた一年でもありますが、対面が当たり前という常識が少し変わってくるのではないかと考えた一年でもありました。

   
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