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 群馬パース大学 保健科学部 検査技術学科 : 林 由里子

 対面授業実施のためのITシステム活用

本学は医療系総合大学として2学部7学科を有し「チーム医療を学び、現場で活躍できる人材を育成」という理念のもと教育に取り組んでいる。本稿では、コロナ禍での対面授業を可能にしたITシステム活用事例を紹介したい。
 昨年冬に突如として始まった新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、多くの大学がそうであったように本学でもオンライン授業の導入を余儀なくされた。短期間でそのシステムを構築した事務職員の方々の苦労には、今でも感謝と尊敬の念を抱いている。当初はオンライン授業や授業動画の配信をメインに講義を実施していたが、医療系総合大学である本学にとって決して欠くことのできない実習科目に関しては当然ながら完全オンライン化は難しく、また7学科を有する本学の特色でもある「多職種との連携」や医療専門職として必要なコミュニケーション能力、課題解決能力を学ぶ「専門への誘い」といった本学特有の教育を維持することからも、近隣の他大学に比べて早い段階で対面講義の再開へと踏み切った。そこには、オンライン授業のためのIT活用ではなく、対面授業実施のためのIT活用と徹底した感染予防対策という大学一丸となった取り組みがあり、前例のないウィズコロナへの模索により成し得たものであった。以下に事例を記す。
 対面授業における最大の課題は感染予防であるが、これまでオンライン授業で利用していたGoogleアカウントを利用して講義参加前の健康観察記録の入力を必須とし、学生自身の体調や周りでの感染状況などの情報を点数化し、担任が講義前に確認を行うこととした。感染の可能性や接触者となりうる可能性が疑われる学生には個別に担任より連絡を入れ、状況に応じて自宅学習の指示や病院への受診を促すなどの対応を行っている。情報は点数化されているため教員は一覧から点数のみ確認するだけで良く、学生一人一人の健康観察記録に目を通す必要がないため、非常に効率的に運用されている。また、それらの健康観察記録はその後の公欠手続きの際の書類としても有効となるため、事務手続きの手間が省ける利点も得られた。感染対策としては、講義室の換気はもちろんのこと、各学生の座席を指定とし、大学内で接触する人を極力限定し万一の際には追跡できるなどの対策を実施している。これらの施策により、これまで学内でクラスターなどは発生しておらず、対面授業の継続に支障をきたすような事例は報告されていない。
 冒頭で述べたように、チーム医療を学び、現場で活躍できる人材の育成が本学の教育理念であり、学生は医療現場で活躍することを目標に日々学んでいる。そのためには、人(患者)と関わることを避けて通ることは出来ないのである。今回の取り組みは、学生が単に対面での授業に参加できたというだけではなく、今後医療の現場に出て行く中で、人(患者)と関わりながら感染を防ぐためには自身の日々の行動や体調をしっかり管理し、把握することがいかに大切かを学ぶ大変有意義な取り組みとなったと考えている。オンラインでの健康観察記録を開始して以降、学生が些細な体調の変化や自分の行動に目を向け感染拡大を防ぐにはどうしたらよいか自ら考えるようになったと感じている。
 誰もが予想し得なかった感染症の出現により混乱をきたした教育現場でIT活用の必要性が叫ばれる中、本来の目的と異なる形でのIT活用により、本来期待していなかった副産物として教育的な効果も得られる形となった。特に医療教育という特殊な環境下においては、ウィズコロナに向けた新たな授業手法の確立などが急務であり、今後、各大学間でノウハウの情報交換が進むことを期待している。

   
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