FD(Faculty Development)とは、これまでの高等学校での教育の場とは異なり、「教員が、授業内容・方法を改善し、向上させるための組織的な取組」を示すものとされ、基本的に学生ではなく教員が行う行動とされている。2008年4月1日に施行された大学設置基準の改正により、FDは法律で義務化され、すべての大学が何らかのFDを実施している。
当大学ではFD活動の取り組みとして授業参観を年に2回や教員研修会を1回実施し、授業後には参観者によるディスカッション(振り返り)やGoogle Formを使ってのアンケートを実施し回答している。自身の専門分野以外の授業を参観することで担当教員の資料作成・教授法、授業の工夫や学生の反応を含めた指導法を目の当たりにできることは、とても新鮮であり、自身が担当する科目の教授法へのヒントをもたらしてくれる。また異なる学科間で行うディスカッションでは授業の手法に関する情報だけでなく、他教員による視点から新たな気づきが得られ、これこそが大きな収穫であると考える。
昨年度、学内のFD委員会では「学生の問題点とその対策」について議論した。ここで3学科(健康科学部:理学療法学科、整復医療トレーナー学科、看護学科)から構成する委員からの共通する問題事例が浮上した。問題点を改善するための対策の一つとして、いま学んでいる世代の特徴・価値観を我々教員が先ずは理解することから始めることとした。
『Z世代の学生の特徴を知る』と題し、全学教員による学内FD研修会を学内の専門教員に依頼し実施した。
内容の一部を紹介する。
「1〜4年生はZ世代(1996〜2010年頃の生まれ)に該当し最大の特徴は物心が付いた頃からインターネットやパソコンが身の回りにある環境で育っていることからデジタルネイティブとも称される。そのため個々がICT機器の使用に習熟している印象を持たれやすいが、実際にはスマートフォン以外は扱えない層が大多数を占める。また、近年では大学生のスマートフォン所有率は97.0%に達し、文部科学省の報告では1週間の合計使用時間は13時間にも及ぶとされている(授業への出席時間は17時間)。こういった点からもZ世代はデジタルネイティブではなく、スマートフォンネイティブと表現されることも多い。
しかし一部の学生はスマートフォンによる脳の報酬系への刺激によって依存的となり、多くの可処分時間を消化している。スマートフォンは本質的には携帯電話ではなく、パソコンである。その点を鑑みれば大学生のICT導入とIT化は、入学時で既に達成されているとみなすこともできる。すなわち、このインフラを活用した上で『手段』を与えることが、迅速なDX推進の鍵となる。しかし一部の学生はスマートフォンによる脳の報酬系への刺激によって依存的となり、多くの可処分時間を消化している(負のDX化)。そこには睡眠障害、生活リズムの変調、体調不良による学習力の低下等の健康面だけでなくコミュニケーションまで影響してくる。」
改めてFDとは、「教員が、授業内容・方法を改善し、向上させるための組織的な取組」を示すものとされている。一方でスマートフォン依存による負の連鎖が影響しているかもしれないZ世代(一部の学生?)。各学科で浮上した共通する問題事例の改善のヒントがそこにあると確信した研修会であった。
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