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青森中央短期大学 清多英羽


 

表情のない学生には閉口する。

週6コマ、講義系の科目を担当している。座席指定のおかげで、学生個々の様子は手に取るようにわかる。虚空とにらめっこしている、規則的に船をこいでいる、教員を見ているようで実は意識が飛んでいる等、学生の表情・所作は千差万別である。彼らの実情を推し量りながら、講義内容を厚くしたり、薄くしたり、場合によっては大幅にカットしたりもする。講義系科目の使命は、第一義に、すべての学生に同じ量の適切な情報を与えることだと自覚してはいるものの、そのときどきの「学生的天候」にあわせて、傘をさしたり、一枚脱いだり、コートを着込んだり、こちらも何かと忙しいのは仕方がない。

毎年、学年に一人くらいは現れるのが、無表情な学生である。彼/彼女は、不思議と常に教室後方に座している。教員ならだれでもご存知の通り、教壇から離れた学生の映像は不必要なくらい目に飛び込んでくる。無表情さも際立つというものだ。学期のはじめはさほど気にならない。まだ慣れていないから、これから講義内容が盛り上がってくるから、友達がいないのかな、人見知りなのかな等、学生の立場に立った弁明を試みることによって、彼/彼女の無表情さから必死に目を逸らそうとする。

しかし、2ヶ月も経過すると、次第になにか重大な決定を下されているよう心持ちになる。だから、講義技術に工夫を加えて彼/彼女の表情の変化を期待するが、そのポーカーフェイスたるや、達観の境地にある禅僧のように不変である。先だって、学生には予告無しの防災訓練があり、緊急のベルがけたたましく校舎を駆け抜け、他の学生が浮き足立ったときですら、彼/彼女の表情は「虚無」であった。

一度だけ、彼/彼女が講義中に表情を崩した現場に遭遇したことがある。それはわたしが第15回目の講義でこう宣言したときだった。

「わたしの授業は、来学期はありません。」


   
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