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 山形大学  橋爪 孝夫
 

「大学での学び」について

 

過去に初年次教育の分野で複数の教員が担当する教養の講義があり、大学の歴史について話をしてほしいと依頼を受けました。この際、基礎的な知識をただ講義形式で受け取るだけでは受講者の頭にも入らないであろうことから、大学の歴史的成り立ちの講義の後にグループディスカッションの時間を設け、5人程ごとに「現代の、自らの、大学における学び」について話し合ってもらい、最後は班ごとの代表者に発表してもらうこととしました。

 

講義は質問の手もいくつかは挙がり、それなりに理解されていたように思います。しかし発表の段になって、6グループの代表者すべて揃えたように「大学における学びは学生側が主体性を持って行うことが大切」という内容になってしまいました。

  

確かに、高校までの講義中心の学習とは違う、大学ならではの学習が始まる、という区切りの意識を持ってもらいたい、というコーディネーターの要望はありましたので、結果としては狙い通りなのですが、中世ヨーロッパを端緒とした大学の成り立ちから歴史について伝えていった中で、「学習」と対になった「教授」の側の話には何故興味が持たれなかったのだろうか、と不思議に思い、或いはこちらの思い入れが強すぎて、「学習」ばかりが強調され「教授」についてその意義と必要性を伝える努力が足りなかったのではないかと不安にもなりました。

そして講義後、コーディネーターとリアクションペーパーの整理をしていると、多くの学生が感想の中で「前回のビデオ」の内容に言及していることに気づきました。前回担当の先生はレポートの書き方等について講義をされたのですが、一時間半という時間を有効に使うため、レポートの書き方だけでなく、終わりの方では教育を扱ったテレビ番組のビデオを上映したとのこと。ここで上映されたビデオの内容が生涯学習を扱っており「一人一人が自ら学ぶことが大切」という心に響くメッセージが込められていたらしいのです。

担当者が違っても出席学生からすれば「同じ授業」ですので、「先週の内容」との関連で見るのは当然でありまして、講義中での大学における「教授・学習」の歴史を追っていく中でも、皆の問題意識は「学習者の自主的学習態度」に自然に集まっていったわけです。 この失敗からは複数名で担当する講義については担当者間の打合せが如何に重要かということを身に凍みて学んだのですが、更に厳しい課題も感じました。

それは「先週見たビデオで言っていたことが『正解』だと思った」に類する記述が複数名あったことです。一時間半をかけて史料を基に歴史について学び、或いは学友達と議論を交わす中で得た「自分たちなりの学び」よりも、何処かにある(例えばドキュメント番組の中で語られているような)「正解」の方に価値を感じている。この強固な「正解」を求める価値観を如何に揺さぶるか、ということが、大学における学びを成立させる上で非常に重要な課題であるとの思いを新たにした出来事でした。





   
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