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特色ある教育の開発、教育力の向上をめざして

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 山形大学  小田  隆治
 

『多様性という時代のキーワードに大学はどのように対峙するか』

進化とは、一般的に考えられているように、生物の構造や機能の高度化だけを指しているわけではありません。ダーウィンは現代の地球上に生息する生物の多様性を進化の中に見ています。 つまり、進化とは種の分化に基づいた、生物の多様性の帰結を大きな特長としているのです。

進化には、より優れたものが生き残っていくというステレオタイプなイメージが我々の中にありますが、ヒトが地球上で一番優れたいきものではありませんし、 地球上にヒトだけが生存しているわけでもありません。

現代の車社会においても、車は決して早く走るレーシングカー、あるいはハイブリッドのエコカーだけに統一されているわけではありません。 高級乗用車から軽トラまで様々な車種が存在し、色々なカラーの車が走っています。歴史を経ていけば多様性が増してくるのは、生物の進化だけでなく、我々人間の文明も然りです。

歴史の中で、少し前(数百年前)までは、人間の個性などは社会の中でそれほど尊重されてこなかったでしょうし、そもそも現在よりも圧倒的に職業の種類も少なく、身分制が重くのしかかる均質な社会でした。経済や高度情報化の発展に伴なって、個性の開花に基づく多様性が、社会の中で指数関数的に伸びています。

 

個性に基づいた大学教育とは何かという問題が、我々大学人に突き付けられています。「オーダーメイド教育」が美名のように求められていますが、  学校という組織が行っている大学教育には自ずとその対応には限界があります。サイズの違いはあったとしても、あくまでマス(集団)を対象とした教育であることは間違いのないことです。  各大学、学部、学科にはディプローマポリシーがあり、それぞれ求める人材像があります。そこでは個人個人の違いはないのです。

 

それでも我々は、多様性という時代のキーワードに、大学人として真摯に対峙しなければならないのだと思います。でも、自分の大学のたった一人の学生のために、授業を新設するわけにはいきません。 現実的には、そんな過剰投資はできないのです。では、方策はないのでしょうか。

この解決の一つの手立てが、大学間連携による新たな授業の開設にあります。 新たな授業は一大学から1人の受講生があれば、それが50校集まれば50人となり、授業を開設した意味があります。

これは近隣の大学による単位互換制度だけを意味していません。近隣の大学であっても、他大学で受講するためには、 移動のために前後の授業を受けられなくなります。こうした問題を解決するための一つの方策がeラーニングですが、 これは日本ではそれほど発展しなかったようです。

私は大学間連携によって、学生たちが比較的フリーになる夏季休業中に、全国の大学で開講される教育プログラムに自由に参加できる制度があった方がいいと考えています。 このためには、大学間で自由に単位互換できる新たな制度の構築や、安価に泊まれる宿泊施設の確保も必要になってくるでしょう。

なによりも、学生たちが受講したくなるような魅力的な教育プログラムを生みだすことが必須です。 この取組の一つに「"つばさ"プロジェクト」で我々が地域の人たちと一緒に取り組んでいる「大地連携ワークショップ」があります。 「大地連携ワークショップ」には、地域の人たちの教育力の形成や向上という生涯教育的側面もあり、人口減少等の現代の日本の置かれた難局を、 大学と地域の人たちで一緒に考えて行こうとするものです。こうした超難問に対して、思考は個性を要求することになります。

生涯に亘って主体的に考え行動する。その基盤となる多様な知識や思考法、体験の機会を提供して行くことが、いま大学にできることだと思っています。

「"つばさ"プロジェクト」が推進している「大地連携ワークショップ」や「学生主体型授業」は多様性という時代のキーワードに対峙しているのです。


   
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