理学療法教育に模擬患者(Simulated Patient)を導入した教育方法の実践
本学の理学療法教育において平成19年度から地域住民参加による模擬患者(Simulated Patient, 以下SP)を導入した医療面接の演習を行っています.その概要を紹介させて頂きます.
理学療法学科では卒業までに計3回の臨床実習があります.SPを使った医療面接は,3学年の実習(4週間)前に客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination = OSCE)の一環として行っています.実際の面接の前に,症例の医療情報を提示し,4つのグループに分かれます.面接方略を学生間で検討し,グループ代表者が実際に面接を実施し,それを学生が見学する.その後,学生間でグループ討議し,その結果を5分間で発表します.最後に,SPと教員から気づいた点やアドバイスなどのフィードバックを行います.
SPを導入することにより,臨床現場の面接状況のリアリティーが得られ,どの学生からも良い授業評価が得られています.また,そのリアリティーさゆえに,良い意味での緊張感が生まれ,ごまかしの効かないコミュニケーション能力などの面接技量が試されます.面接時にSPが具体的に感じた点,患者の立場からみたフィードバックがあり,SP導入を他の演習にも希望する学生が多くいます.
特にコミュニケーション能力を必要とされる保健,医療分野の実習には,その効果が大きいと感じています.病院で治療を受けている患者さんに,少しでも確かな知識と技術で接していける手助けにもなります.皆様も一度,このような実践を他の分野に応用してみてはいかがでしょうか?思わぬ効果が発見されるかも知れません.