学ぶ喜び、わかる喜びを感じてもらいたい(触診の授業から)
本学理学療法学科では、1年次後期に「表面解剖学と触診法」と題して、触診技術を学ぶ講義を設けている。前期ではほとんど座学にて、新しい概念や知識を覚える毎日であった1年生が、後期になって初めて触れる演習形式の授業であり、理学療法士として大切な、自らの手で触れて感じとるということの初めての場である。本日第1回目の授業を終えたところである。手ごたえは、まだわからない。夏休み明けすぐの授業だからか、ぼんやりした顔の学生が多い。講義を「受ける」、というやや受け身の姿勢から、自ら触れる、学び取るという姿勢への移行は、まだまだである。
最近の学生は、立体的に捉える・3次元化する能力に乏しくなってきているのではないか、という意見を近頃よく耳にする。この授業も、平面で描かれている身体の構造を記した図版を片手に、立体である生身の人間を触って、その立体的な構造について学び、自らそれを触れて確認する作業を繰り返す。まさに、立体的にヒトを捉えることになる。これがなかなか難しい。私も、学生だった頃、平面の図を自らの身体に当てはめるのに苦労したことを思い出す。「表面解剖学と触診法」の授業では、構造の特徴をとらえ、他の構造物と鑑別する基本原則を教え、その上で根気よく図と体とを見比べさせて、実際に触れるよう指導する。学生たちにも早く、自らないし友達の体を触れて、2次元で表現されている世界を、実際に3次元で捉えられた、という瞬間を迎えて欲しい。その瞬間に、自らの頭の中で新たな視点が生まれ、「わかった」という喜びを得るであろう。
ただ単なる実技科目とは位置づけていない。ヒトの体を知る喜び、学び取る面白さを体感して、その後の勉強の励みにしてもらいたいという我々の願いもある。前期で大変な思いをして覚えた体の部位の名前について、ようやく使う時が来たのである。理学療法士という職業を、本当の意味で目指そう、という動機になってもらえればありがたいと思いつつ、来週も学生たちとぶつかっていければと思う。わかったという喜びをたくさん体感してもらえるように。