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神奈川大学  杉山 崇


私の"教員の自覚","授業の楽しみ方"とグローバル社会の大学教育

今、大学教育の本質を問う議論が熱いです。

産業界は成長分野と未開拓領域を失い,限られた資源・市場をめぐるグローバルな経済戦争の中で産業と社会の構造が変わりつつあります。さらなる発展か,成熟か…。世界的な岐路の中で大学教育が何を成すべきか,各国で議論が展開されています。

日本の議論を見てみましょう。学生を「人材(労働力)」と考える産業界からは人材としての付加価値を大学教育に求める議論が熱いです。経産省からは問題解決能力・応用力を備えた「社会人基礎力」という提案がなされています。これは,「永く使える」人材像の提案でしょう。一部には会計ソフトの使い方といった「今,(企業で)使える」技術訓練を大学に求める意見もあります。企業が労働者に投資すべき研修を大学教育とするのは無理がありますが、「使える人材を出してくれ!」と大学に期待していることがわかります。

一方で日本学術会議のワーキンググループは社会の担い手としての市民性教育にも注目しています。これは世の中を見通す「グローバルな意識」と社会の一員としての「自覚」を備えた「人物(人間性)」を育てることです。

さて,人は人材である前に「人物」です。人物として意識的にも精神的にも成熟していなければ,世の中で永く活躍できないことは20年余りの「人を見る仕事」から実感しました。人間性を支える脳領域は最も発達が遅く,20代なかばまで未完成だと言われています。脳は環境に応じて発達するので,環境が重要です。「今,使える」だけの職業技術を教える環境が「人物」を育てるのに適しているかどうか,私には疑問です。

学生にはグローバルな意識と自覚に富む「大人」が集う場が必要で,私はそれが大学であり授業であると思っています。私たち教員は日々「人物」をそして「市民」を,将来の社会を育てていることを自覚して,私たちの専門性がそれにどう役立つのか考えながら教育を行う必要があるでしょう。これが私なりの"教員の自覚"です。

さて,神奈川大学でも2014年前期の授業アンケートが集計されました。本学には私も憧れるような学識深い先生が多いです。授業で重要なことは学識が学生にどう届いているかです。本来,「学問を通して世界を見る」と「違った世界が見える」はずです。これが学生の「達成度・充実度」につながり,「グローバルな意識」と「自覚」の成熟を促すはずです。そうなってないなら,私は届け方を見直したい。授業アンケートはその手がかりです。

日々の授業と学生を通して私たちはこの世界の未来に関わっています。私たちの学識と教育が学生の人生に,そして学生がこれから関わる人々に、社会に、そして未来に意味あるものであってほしい。そう思うことで、私は次の授業が楽しみになる気がします。

 

   
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