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特色ある教育の開発、教育力の向上をめざして

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青森公立大学  藤井 一弘



青森公立大学に着任以来、まもなく丸5年になる。1987年に北陸地方の短期大学を振り出しに私の教員生活は始まったが、1989年にベルリンの壁が取り払われ、その2年後にはソビエト連邦が崩壊し、自由主義の勝利が云々された。世界が単一市場となり総資本主義化していくのと軌を一にして、グローバリゼーションが声高に語られるようにもなった。

大学も、この流れに無縁ではいられず、そこでの教育と研究を語る場合にも、いわゆる経済社会で用いられてきた言葉が盛んに導入されるようになった。戦略然り、競争然り、成果――それも短期的な――然り、と枚挙にいとまがない。Faculty Development(FD)も、Economic Development(経済開発ないし経済発展)を連想してしまうと言えば、お叱りを受けそうであるが、それにしても、いずれも経済自由主義、そしてグローバリゼーションの旗手でもある米国発の考え方ではなかろうか。

学部生時代に読んだ藤原正彦の『若き数学者のアメリカ』では、学生からの授業評価が低いために、任期が更新されなかった「優秀な」若手数学者が登場していた。FDのツールは、授業公開、それに基づくピア・レビュー、そして先進的な教育事例の紹介と多々あるが、授業アンケート――大学によって多様に呼ばれているようであるが――に基づく授業改善は、その中でももっとも一般的なものだろう。もちろん、私が教員生活を始めたときには、そのようなものはなかったが、FD活動には早い時期から熱心であった前任校でも2002年から本格的に実施されたように記憶している。

本学では1993年の開学当初から授業アンケートに基づく授業改善を実施しており、この点では先進的と言えるだろう。「教育に責任を持つ大学」を標榜し、GPA制度を厳格に運用していることに鑑みれば当然のことではあるが、「教育に責任を持つ」とは、よくよく考えると難しいことである。educationは、もともとは「外へ能力を導き出す」ということだそうであるが、学生ひとりひとりの能力は多様――これは本来の意味であって、近年よく言われる「多様な能力」という意味においてではない――であって、その潜在的な能力を見出すのも困難であれば、その多様な能力に対応するための教員の側の引き出しも多様でなければならず、これもまた至難である。いわんや、その成果を測る共通の尺度があるかとなると、首を傾げざるをえない。ところが、滔々たるグローバリゼーションは、むしろ標準化を目指すという意味で「モノ・カルチュア化」へとつながっているようにも見える――教育の場に「経済社会」の言葉が頻繁に登場するように――。

ほとんどのプロ・スポーツ選手なら、とっくに引退している29年目のシーズンに突入しようとしているロートル教員としては、ともあれ「日々FD」と思い直して、現場に臨まねばなるまい、と思うのである。




 

   
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