本学児童学科では授業に「劇」を多様に取り入れている。例えば、保育内容演習として「ミュージカル・朗読劇・人形劇」をTV子ども向け番組制作者を講師にお迎えして、大学祭や地域の子どもたち向け大学主催の体験塾などで実施している。この他、「心理劇法」を駆使している。心理劇法は、100年近い歴史のあるアクティブラーニング法である。「心理劇とはサイコドラマ,ロール・プレイング,ソシオドラマ,プレイバック・シアター等即興劇的技法やアクションメソッドを用いて行う治療的,教育的集団技法の総称である.」(日本心理劇学会ホームページ)と定義されている。
本学科では4〜5名の教員が授業(対人関係論、教育相談論、保育内容言葉・表現・人間関係、保育実習事前事後指導など)に心理劇法を活用している。各授業においては、教員が方向性機能・関係性機能を、学生は内容性機能を担っている。具体例を筆者が担当する教育相談論(教員免許状取得に必要な科目ひとつ)で以下に示したい。
これは15回授業のうち前半の教育相談の定義・歴史・理論・現状等の講義を終えた後の事例研究である。
@ 各自が取り上げたいテーマを考察し、A4用紙に記述するの。
A 約4〜5名でグループを形成、テーマを発表、グループテーマを設定する。
B 各グループのテーマをクラス全体で共有、全員が全体を俯瞰する。
C Bのなかから典型例テーマを教員が取り上げ、心理劇的に展開。
D 各グループがそれぞれ心理劇法を用いて課題解決の道筋を探る
E 各グループの内容をクラス全体でシェリング。
F クラス全体で質問や考察を交換
長時間にわたるグループワークのあいだ賑やかな笑い声が絶えない。特に劇が終了した後のシェアリング場面で(なるほど)「そうか」という驚きや感嘆・感動の声が上がる。
以上「劇」を取り入れた授業は、保育者・教員養成課程において、極めて有効であると考える。学生は各自のテーマを人と共有し、仲間とともに問題解決の道筋を探っていく。多様な役割を取ることや変化する状況に応じて創造的に生産的にふるまう訓練が行われて、人間が好きという感情が育ち、人間科学への関心の幅が広がり、成長の道筋が拓かれる。