キャリア教育の授業を担当していますと、履修学生の履修理由のなかに「自分に自信を持てないから」という声を聞くことがあります。彼らの特徴は大きく2点あると思います。
1.これまでの人生のなかで、そもそも失敗経験が少ない(特に大きな失敗をしてこな
かった)。つまり親や先生の言われた通りにこれまで進路を決めてきた。また失敗して
つまずきそうなときに、誰かがフォローしてくれていたということが考えられます。
2.これまでの人生のなかで、小さなまたは大きな失敗をしてきた。つまり、不本意入
学を含め、自分の思うようにいかなかったと本人が考える大きな失敗体験、または小さ
な失敗積み重ねてきたことでやる気になれないでいることが考えられます。
そして、1と2の学生ともに、物事に挑戦することを避ける傾向(チャレンジしない、
行動しない)や、人間関係が狭い傾向(かかわることで傷つきたくない、面倒に感じる)があると考えられます。
このような傾向を踏まえ、担当している授業では、まず彼らに自信をつけさせてあげることを大切にしています。これは、心理学者のA.バンデューラの提唱した「自己効力感論」をベースにしています。バンデューラは、自信を高める方法として次の4つのアプローチをあげています。労働政策研究・研修機構の下村先生は、『キャリア教育の心理学』(2009)で、現在のキャリア教育全般に、この理論が支柱になっていると指摘しています。
@「達成体験(成功体験)」:忍耐強い努力によって障害を乗り越えた体験。
A「代理体験(モデリング)」:自分と同じような人の姿を見て学ぶ。
B「言語的説得」:言葉による励まし。繰り返し説得されること。
C「感情的喚起」:気分を高める。心身ともに元気な状態であること。
上記アプローチを参考にしながら、授業内のペア・グループワークで、小さな成功を積み重ねていける機会や、他者の良い点を学ぶ機会を提供しています。また、教員から学生の発言や行動にポジティブなフィードバックを返す(伝える)取組も行っています。
この取組を通して、「自分もやればできるかもしれない!」という感覚を少しずつでも持ってもらえればと考えています。そして「自信」を持った学生たちが、主体性を持って授業や課外活動等に、果敢にチャレンジしていってくれることを期待しています。