本学は看護,理学療法,作業療法の3学科がある公立大学で、3学科が連携しながら教育活動を展開しています。私の専門分野は精神看護学といって精神疾患を有する人へのケアに関する領域で、学生にとって関心の有無が二極化しやすい分野です。人のこころに関心をもつ学生が一定の割合でいる一方で、医療行為の多くは身体に対するものであるため本筋ではないと考える学生も一定の割合でいるからです。
精神看護学を精神的健康と社会的健康の観点で理解するために、精神看護方法論という科目においては学生同士での演習を多く行うようにしています。社会的健康とは自分の近しい人などと健全な関係が保たれるという意味合いであるため、学生同士での自然な助け合いを経験するほうが学習経験として効果的だからです。なかでも、私が重視している演習に、配られた絵をもとに自分と似た絵の人を探して尋ね回るという演習があります。この演習では、自分が何を知らないかを言う必要があり、相手がどんな絵を持っているかに耳を傾けて自分の想像力を働かせる必要があります。自分が前提にしている観念があると質問を省略しがちであること、関心や尊重の気持ちが相手からの率直な言葉につながることなどの発見をしてもらっています。
さて、そんな私は現在、学生支援委員会の委員として学生の円滑な就学のための情報収集等を行っていて、障がいを有する学生や少数派(マイノリティ)となる背景を有する学生に対する修学上の配慮に関する研修に参加しました。その研修では講義と演習を通じて、就学意欲をもつ学生に対して尊重の念をもつことと、その学生が必要とする合理的配慮について面談での応答等によって尊重の念を行為化することが重要ということを学びました。自分が学生に講義していることと似た内容であったことに安堵を覚えつつ、先ず隗よりはじめるべきことであると改めて知る機会となり、さらに効果的な授業を構築するべく気が引き締まりました。