私が所属する本学芸術学部美術科は、日本画・洋画・版画・彫刻・工芸・テキスタイル・総合美術といった7つのコースで構成されている。一学年の学生数は170名程で、入学時からコースに分かれて専門演習の授業を行っている。そこではそれぞれ独自のカリキュラムが組まれており、各分野での作品制作を通して創造力と想像力を鍛え、社会的自立に向けた教育を目指している。
他の美大の多くはそれぞれが独立した学科であるところ、本学では美術科としてまとまっていることが大きな特徴である。近い分野のコース同士での合同授業もあれば、7コースのうち3つを選択して受講できる、いわばコース間留学のような授業もある。上級生のなかには他コースのアトリエで制作する者もたまにいる。地方大学特有の開放的な立地環境からか、作家活動もしている教員たちの思考が柔軟である為か、おそらくどちらも相俟って、コース間の風通しが良い。これもまた大きな特徴である。各分野での実直な学修を基としながらも、ハイブリッド的な志向にも自然と対応しているように思われる。
このような雰囲気のなか、狭い分野意識にとらわれず、広く美術を通して身に付く力について考える気運が高まってきた。2年程前から私を含め数名がコア・メンバーとなり、新たなカリキュラム構築に向けて動き始めている。これまでの各コースのカリキュラムを踏襲しながら、その半分近くを大幅に改良し、本年度より新しいカリキュラムとして順次刷新される。既にこの前期、1年生に導入した「美術科ファウンデーション」はその名の通り、美術科として身に付けるべき基礎力に重点が置かれている。1年生全員(本年度は173名)がデッサンと彫塑を4週間ずつ体験する。内容の詳細は省略するが、美術科には教員が25名おり、この期間は全員が指導に加わる体制をとった。学生からしてみれば他コースの教員から様々なアドバイスをもらえる絶好の機会である。実際に、この授業の為に独自に作成したアンケートでは概ね高評価であった。
私はこの授業導入における統括の任を受け、1年程前から綿密に計画を練ってきた。美術科の根幹としての授業内容、大人数での演習を円滑に行う算段など、7名の教員で話し合いを重ねながら何とか実施に漕ぎ着けた。振り返ると、もっとも頭を悩ませたことは、教員全員の意思統一であった。上述の通り、皆作家として個性豊かな面々である(だからこそ面白いことも大いにあるのだが)。
我々は学生を教育しながら、同じように我々についても学んでいかなければと、月並みながら改めて実感したのであった。