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 山形大学  小田 隆治
 

就職試験

今、私の研究室の4年生は教員採用試験のために日夜必死で勉強している。教員採用試験に合格した先輩が研究室に残していった資料を見て、一日の学習時間を8時間に決めているようだ。4年生になると卒業研究以外に授業はないので、一日中勉強できるはずであり、私が「一日24時間全部が自分の時間なのに8時間しか勉強しないならば、サラリーマンでいうと"5時まで男"だろう」とからかう。そう言われればそうだ、ともっと学習時間を増やそうとするが、これまで誰も成功した学生はいない。ある学生は私に「8時間が自分の頭の限界です」と言った。長時間すれば良いというものではないことはこちらもわかっていて、自分がどのくらい必死で勉強できるかを試してみればそれでいいのだと思う。これほど必死に勉強できる時期は、人生にはそうはないのだから。

学生は理科の教員を目指しているのだが、高校時代に物理を学んでいないので苦手意識が強い。かれらは参考書と問題集で独学で勉強していくが、なかなか理解できないようで、いつも愚痴を言っている。そこで研究室に入ってきた3年生が高校時代に物理を選択していたというので(得意だったと言ったわけではない)、この3年生に物理を教えてもらうことにした。過去の採用試験に出された問題で分からないところを3年生が勉強して4年生に説明するのである。生物の研究室に来たのになぜか物理の勉強をすることになってしまったが、愚痴も言わずに出された問題を家で何時間もかけて必死に解いて来る。私は学生たちが教え合うこのシステムをとても気に入っているが、今のところどうも双方向ではなく、利益があるのは4年生だけのようだ。3年生がこのことに気づく前に(すでに気づいているのかもしれないが)、3年生が何かしら報われるようにしなければならない。

私はと言うと、週に一度、学生の履歴書、小論文、面接の指導を行っている。こうした指導を通して驚くことがある。小論文では、上から目線の作文を読んでびっくりしたことがある。これでは採点者の心証を害してしまうだろう。作文を書いた本人はいたって穏やかな性格なので、そのギャップに驚いた。学生に言わせると弱気な自分を表現してはダメなので、積極性を前面に出さなければいけないと思い、こうした論調になったというのである。世の中、強い弱いではないよ、と私は諭すのである。学生たちは私にてにをは等の小論文の書き方のテクニックの指導を期待していたようだが、それに反して、かれらの書いたものを読んで、私は内容にこだわって指導している。学生たちは出された課題についてこれまで深く考えたことがないので、書き方もへちまもないのである。こうして、課題についてみんなで話し合うことになり、そしてもう一度書き直してくることになるのである。繰り返すことによってかれらの思考は深まり、視野が広がっていく。

もう少しである。もう少しの我慢である。受験勉強が楽しいとはサラサラ思わないが、この苦しみは今後の君たちの糧になることは間違いない。こんなことを納得する余裕は今はないだろうが、もう少しの辛抱である。もう手に届くところに来ている。  

 






   
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