私のゼミでは、「日本と世界の食料事情を知ろう」というテーマの下、学生がデータを集め、世界各国の食料事情の把握・分析を行っています。毎年、このテーマに興味がある学生がゼミに入ってきますが、ほとんどの学生が食料生産の現場を知りません。
教育効果を高めるためには、パソコンの前に座りデータと向き合うだけでなく、実際の食料生産の現場を見てもらうことが必要だと感じていました。知り合いの合鴨農法を行っている農家さんにそのことを話したら、幸いにも私の考えに賛同していただき、田んぼの草取りに誘っていただきました。その夏、千葉県のとある田園地帯には、初めて入る田んぼに足を取られ、悪戦苦闘しながらも合鴨と一緒に何時間も草取りに没頭している学生がいました。さらに翌年からは、地域で行っている田んぼアートの田植えに誘っていただき、毎年参加しています。そうした現場で、学生たちは田植えという農作業を行うだけでなく、普段食べている米や里山への景観への関心を高めています。また、田植えに集まった地域の方々、特に学生が普段ほとんど接点のない子供や老人との交流も生まれ、素晴らしい経験となっています。毎回、参加した学生の表情からは満足気な様子が伝わります。そして毎年この活動の後には、学生のゼミ活動への取り組みがより積極的になるのです。
私がこの活動を通じて感じることは、「教室での座学」と「現場の体験」は「学び」の両輪だということです。事前に農業の知識が何もないまま、田植えに参加すると、言われた作業をこなすだけになってしまいます。事前にある程度の知識を持って作業に参加すると、その知識と現場での体験が結びつき、大学で学んでいることに対してさらなる興味が生まれていきます。
今後も座学による知識と現場の体験を提供し、学生に主体的な学びを促していきたいと考えています。
