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帝京平成大学 : 小森次郎

名前を呼び対話することの効果


FDのさまざまな取り組みが行われている中で、さて「授業改善エッセイ」のテーマはどうしたものか少し時間をかけて考えていました。その間、1・2年生向けの講義で複数の学生に受講姿勢の改善が見られました。似たようなことは他の科目でも見られるのですが、各学生の改善の程度には差があり、変化のタイミングはそれぞれ違うようです。ということで、今回はこの変化につながった理由について触れてみたいと思います。

半期の間に学生の姿勢が好転する理由としては、学習が進むことで学生がその講義自体を面白く感じるようになったこと、重たい課題が出されたことや講義内で厳しく注意されたこと(理想ではないですが)、ライバルや目標となる学生の出現、将来の夢の具体化、さらには実習やインターンでの経験、厳しい就職活動などが挙げられます。当然、他の教員の講義や指導のおかげもあるし、これらの理由が複数重なることも考えられます。しかし今回の場合、件の科目と学年および変化のタイミングを根拠とすると、更なる理由として次のこともあり得ると考えています。

それは@学生の顔と名前をできるだけ覚え、A名前で呼びながら問いかけをする瞬間を講義の中で設けたことです。このうち後者は単に「田中君、この部分についてどう考える?」といった数秒程度のものです。それでも、教員に自分の顔と名前を覚えてもらうことは学生にとって嬉しい事です(少なくとも学生時代の自分はそうでした)。また、教員から見て自分たちが "one of them" ではなく各個人として認識されていると感じ、「こりゃうかうかしてられない」という気持ちになることも考えられます。この「嬉しい」と「襟を正さねば」という反応を経て学生は受講の姿勢を改め、主体的に学ぶようになったのではないでしょうか。   


いっぽうで、教員が名前を呼んで間違えたときの気まずさは学生の前で誤魔化せません。また、目立つ学生ほど名前は覚えやすく、学生間に不公平が生じることがあります。しかも、私は人の名前を覚えるのが苦手なので、どの講義であっても「公平に学生の顔と名前を記憶する」ということに苦労しています(特に最近は)。そこでこれらの対策としては、座席表を作るほかにフルネームで呼んで出欠をとることや、クラスによっては全員の写真を撮らせてもらい顔を覚えるための"あんちょこ"を準備するなどを行っています(写真の撮影時には他への転用は無いことと、授業期間終了後は破棄することを約束して撮影している)。

いずれにせよ、生徒や学生の名前を覚えて個別の対応を大切にする、ということはどの教育機関の教員にとっても基本的なことであり、大学であっても少人数の教室や専門科目、実習では自ずとそうなるかもしれません。しかし大教室の講義であったり他学科の学生や新入生が多い場合それはなかなか難しいことであり、また意識をしていないと疎かになりがちです。しかも、ICTを用いた授業管理や学生との間接的なやりとりが増える中で、学生を名前でしっかりと呼び、顔を見合わせる時間を一瞬でも多く設けるという当然のことは、今まで以上に重要になるのではないでしょうか。数秒程度の一対一のやりとりであっても、そこから得られる効果はたいへん大きいはずです。「うー、彼の名前が思い出せない」と頭の中で焦りつつ、各学生との直接のやり取りにこれからも心掛けていきたいと思っています。


   
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