アクティブ・ラーニングが推奨されている現在、授業にグループ学習を取り入れている方々も多いことでしょう。そこで苦労するのが、グループのメンバーの決め方ではないでしょうか。学籍番号順に振り分ける、抽選をするなど様々な方法がありますが、私が失敗した例をここで紹介させていただきます。
その授業の受講生のなかには、成績の良い優秀な学生がいました。各グループに優秀な学生を1名ずつ配置し、他のメンバーは抽選で決定しました。優秀な学生がリーダーとなって他の学生を引っ張って行くことを期待してのことでした。
学習する内容一章ごとに講義、コンセプトマップをグループで作成しそれを発表、ライヤーゲーム(ある事項をグループが説明をするのですが、説明の中に1カ所だけうそ(間違い)を加え、その箇所を他のグループが言い当てるゲーム)の三回の授業を割り当て、進めました。
この授業は専門性の高い科目のため、当然グループ学習に参加するには予習や準備が必要になります。ところが、しっかり学習してくるのは優秀な学生で、しっかり学んで欲しい他の学生は準備をしてこないのです。学生間に学力差があると、学力のある学生が他の学生に業を煮やして自分で準備してしまうのです。
そうなると学力のない学生が学力のある学生を頼って、さらに予習しなくなる。まさに悪循環。学生ごとに何かの課題を与えて提出させるような個別指導を行うことも考えましたが、受講者数が多く、過程が煩雑になるためこのまま続けました。
案の定、全授業時間終了後に行った試験では、優秀な学生がいたグループの優秀な学生以外の学生の得点は、他のグループの学生の得点よりも悪い結果になりました。優秀な学生からは、負担がかかるばかりで自分にメリットが無かったことを言われました。学生は受講した授業を通じてどんなメリットが自分にあったのかを考えるので、メリットが無ければ授業を履修した意味が無いと考えるのは当然でしょう。
教えることが自分の学びを深める事に気づいてくれれば良かったのですが、その気づきはなかったようです。専門性の高い分野特異的な事項を学ぶグループ学習は、一般的な知識だけで行えるグループ学習に比べ、グループ内の学生の知識やスキルの差が大きくその効果に作用するようです。特に習熟度の高い学生は、より高い知識やスキルを身につけることを望むため、自分よりも大分知識が少ない学生相手だと得る事が少ないのかも知れません。
学生にグループ学習と教員が行う講義のどちらが好きかという質問をすると、学力の高い学生の多くは講義を望み、反対に学力の低い学生はグループ学習を選ぶ傾向があります。学力の高い学生は、教員の講義から深い知識を学び取りたいのに対し、学力の低い学生は、興味もあまりないため講義を聴くのが辛いからのようです。グループ学習は、その学生に応じてグループ構成や方法、内容を変えなければ望む結果が出ません。次回は同程度の学力を持った学生を集めたグループで学習を行い、その結果を見たいと思っています。