「私ってほめられると伸びるタイプなんだよねー」っていう言葉を学生がよく言っているのを耳にするのだが、ただ単に言い訳か叱られたくないだけだと思っていた。もちろん叱られたい人間などそうそういるものではないが、それにしても多くの学生がほめられることを期待しているようである。たしかに、考えてみるとほめられるのは誰でも嬉しい。それに当たり前だがほめる側も叱るより数段気持ちがいいのである。すごくいい人になったような気にさえなる。叱る時に使うあの何とも言えない嫌なエネルギーを使わなくてもいいし、むしろお互いにいいエネルギーの循環が生まれることさえ感じることができる。よく、ほめられると慢心しそれ以上成長しないなんていう風潮もあるが、自分を評価し認めてくれた人に対しては応えようとするもののような気がする。
この「ほめる」という技を何回か試しているうちにいくつかコツがあることがわかった。まず、１つ目は大きな成果を上げたときだけほめるのではなく、どんな小さなことでもほめることである。これは、相手に「細かいところまで見てくれている」という感動を与えることができる。これはなかなか効果のある技である。２つ目は大げさ（大体２割増し）にほめることである。これは大抵の場合、人は他人を見る時にどうしても批判的になりがちだからである。なので、２割増しくらいでちょうど良い気がした。しかし、１番困ることは何もほめることがなかった場合である。たまにそのような達人が出てくるのだが、何かいいほめ方はないものかと模索していたところ、ある時何気なく使った「なんかいい感じだね」という言葉が１番便利に使えた言葉であった。適当な事言っていると思われるかもしれないが、「いい感じだね」と言われた学生はその言ってくれた人の期待に応えようといい人を演じようとするのである。こちらが認めた通りにしようとするのだなということを実感したなかなか面白い体験であった。
ほめることで相手の自己重要感を満たすことはどのシチュエーション、どの世代でも通用することなのではないだろうか。もちろんダメ出しをすることで伸びていくこともあるだろう。人を導くにはたくさんのやり方があると思うが、ほめるということはその人に「あなたのことを認めているよ」という大事なメッセージが込められている。人は誰しも認められたい生き物であるし、ほめられたい。私も例外なくその一人である。しかし、人はほめられるために一生懸命に努力はするが、人をほめることに一生懸命になる人は少ない。だから、少しでも多くの人をほめることができる人間になりたいと思った自分をまずはほめたいと思う。
