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山形大学 : 小田 隆治


短期留学生のためのインターンシップ「ISAYプロジェクト」のチャレンジ

一年前の平成29年3月、友人のグローグ先生から、イギリスの提携校から短期留学生のインターンシップができないか、という問い合わせがきているけれど、どうしたらいいでしょう、という相談がありました。それならばということで、すぐに就職支援委員長の私はいつも世話になっている就職支援室に向かいました。室長から話を聞くと、正規留学生のインターンシップは日本人学生と一緒に行っているが、短期留学生については何もしていないしこれからその予定もない、ということでした。そこで、数日前に小耳にはさんだ、酒田青年会議所がバスを出して「酒田まつり」に留学生を無料招待するらしい、という話を思い出し、私の脳細胞で瞬時に酒田青年会議所と短期留学生のインターンシップがリンクしました。国際センター長でもあった私はすぐさま留学生係に行き、片桐係長に酒田青年会議所と面会したいのでアポを取って欲しい、と頼みました。こうして3月末にグローグ先生と係長そして私の3人で、内陸部の山形市から、道の両側に積雪がたっぷり残っている月山道を抜け、日本海側の庄内にある酒田青年会議所に出かけました。

待っていてくれた10人近くの理事を前に、私は一枚の資料も提示することなく、次のようなとてつもなく厚かましいお願いを口頭で行ったのでした。

一年後の平成30年の2月か3月に、2名の短期留学生をインターンシップ生として2週間酒田の企業で受け入れてもらいたいと考えています。その際、学生には宿泊場所と食事を無料で提供して欲しいと望んでいます。このアレンジを是非とも酒田青年会議所で行っていただきたいのですが、いかがでしょうか。(いまこれを書いていると、初対面の人たちになんて図々しいお願いをしたのだろうかと恥ずかしく思う)。

理事たちからは、どうして大学から車で2時間もかかる酒田市なのか、どうして山形市の青年会議所ではなくて酒田青年会議所なのか、国際化に熱心な市長のいる酒田市役所に頼んだ方が良いのではないか、等々と至極真っ当な質問が出され、当初は引き受けることに及び腰なようでした。それでも私の不撓不屈の(厚顔な)熱弁によって少しずつ風向きが変わっていったのがかれらの表情の変化からわかりました。一時間後、「一緒にやりましょう」とにこやかに言ってもらえ、全員と握手して交渉(いつの間に面会から交渉になったのだ)を終えることができました(やったー、やったー!)。

私は大学に帰ってすぐにインターンシップの計画書を作成することにしました。たったA4用紙1枚からなる計画書ですが、目的・意義・スケジュール等の項目からなるこの計画書は、以後、ずっと関係者のバイブルとなりました。この急速な展開にグローグ先生は目を丸くし、狐につままれたようでした。

このプロジェクトのメンバーは、グローグ先生と折原留学生係長(昨年の4月に交代になりました)、それにキャリア教育が専門である松坂先生を加え、私を含めて総勢4名となりました。これで大学の布陣は整いました。酒田青年会議所は独自に準備を進め、インターンシップ先を我々が望んでいた日本文化に触れられる若葉旅館に決めてくれました。

インターンシップのネーミングは私なりに凝ったつもりです。「ISAY Project」と書いて「アイセイ・プロジェクト」と読みます。これは留学生の母国イギリスが生んだビートルズの歌「ハロー・グッバイ」の歌詞の一部"You say goodbye and I say hello"にかけています。"Hello"と言って留学生を迎え入れてくれる言葉は軽快な響きを持っていて、今回のインターンシップに相応しく思えたのです。

グローグ先生が留学生2名の人選をし、我々で事前指導を行った後、1名ずつ異なった期間に2週間のインターンシップに送り出しました。インターンシップの初日、学生は酒田青年会議所のメンバーや我々を前にパワーポイントを使って英語と日本語で自己紹介をしました。一週間後に中間発表をし、2週間目に最終発表を行ってインターンシップが終わりました。

2人の留学生は、脱走して山形に逃げ帰ることもなく、2週間のインターンシップを務めあげてくれました。若葉旅館のみなさまは、「ISAYプロジェクト」が教育プログラムであることを理解し、頭が下がるほど忍耐強い指導をしてくれました。学生たちはあまり言葉の通じない日本の旅館で、時に深い孤独を味わったことでしょう。しかし、この経験がかれらのこれからの人生において、大きな財産になってくれるものと信じています。「可愛い子には旅をさせよ」という言葉が、「ISAYプロジェクト」の背景にあったようです。

最後になりましたが、「ISAYプロジェクト」の実現に向けて多大なご支援を賜りました酒田青年会議所と若葉旅館のみなさま、特に酒田青年会議所の後藤守理事長と若葉旅館の矢野慶汰専務取締役に、心より感謝申し上げます。

学生はもちろんのこと、我々教職員も「ISAYプロジェクト」を通して大学から外へ出て、素晴らしい人たちと巡り合え、視野が広がったことを、とてもうれしく思っています。

世界の若者たちよ、山形大学は "Hello"とほほ笑んで、みなさんを温かく迎え入れることでしょう。


   
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