卒業HRの想い出
教師にとって入学式と卒業式は重要な行事である。初めて卒業生を送り出した日のことは、強く印象に残っている。
大学卒業後中学校の教師になった私は、1年目は2年生を、2年目は持ち上がって3年生を担任した。新任1年目は惨憺たるものだった。授業、学級経営、部活動等毎日の仕事に追われるばかりでうまくクラスをまとめられず、生徒諸君には申し訳ないことをした。青息吐息のうちに1年目は過ぎた。
翌年になってもいろいろあったが、次第に担任もクラスも落ち着いてきて、めでたく卒業式を迎えた。当日は、卒業生の名前を呼び上げることで頭がいっぱいになり、式の様子はほとんど覚えていない。終了後、最後のHRがあった。何を話したかまったく記憶にないが、終わろうとすると、代表の生徒が急に立ち上がり、色紙と記念品をプレゼントしてくれた。続いて、一人ずつ全員が、順に私の前に来て花を1輪ずつ渡してくれた。何て素敵なプレゼントだったろう。私は感激のあまり涙が止まらなく、と言いたいところだが、全然涙は出なかった。とてもうれしく感激していたのに、まったく泣けずぼうっとしていた。実は、これには訳があるのだ。
卒業間近の3月中旬、私は、放課後、教室の様子を見に行った。誰もいない教室で掲示物などを整理していると、机の上に何かがある。何気なく手に取ると、それは色紙だった。半分くらい埋まった寄せ書きであった。私は呆然と立ち尽くした。生徒たちがこんな気の利いたものを準備していたなんて。帰り道、私は運転しながら生徒たちとの日々を思い返していた。失敗ばかりしていたのに。良い生徒たちと出会ったと思った。もうすぐ卒業して会えなくなるんだと思った。とたんに涙が止まらなくなった。
元3年4組の皆さん、僕は、あのHRの前にすでにたっぷり泣いてしまっていたのです。2年間、未熟な担任ですいませんでした。いろいろなことを学びました。皆さんと過ごした思い出が、今でも僕を支えています。