筑波技術大学は、聴覚・視覚障害者のための高等教育機関として、聴覚障害者及び視覚障害者の特性に配慮し、学部教育全体を通じた効果的・弾力的な履修ができるよう、多様なニーズに応じた教育プログラム、障害の特性に応じた教育方法、盲学校・聾学校との連携などの指導上の配慮を図ることにより、新しい高等教育を展開している。
筆者は聴覚障害者が学ぶ産業技術学部に所属しているが、教育(授業)環境として、視覚教材、手話、口話、板書等、様々な伝達方法を用いた情報バリアのない授業、対話を重視した少人数の授業が提供されている。
単焦点プロジェクタ、ホワイトボード、ディスプレイなどを複数配置し、多様な視覚情報を提示可能なマルチメディア教室が完備され、教員それぞれが工夫して授業を行っている。
本学では、「伝わる大学・伝える大学」を標榜しているが、可能な限りの多角的な手段を用いて、効果的な「伝わる授業」を目指していることが、大きな特長の1つとなっている。
本学では、FD/SD活動も活発に行われており、近年では、「本学の現状」や「アクティブラーニングに関する好事例」に関する知識を共有したり、「障害者差別解消法施行後の合理的配慮等の現状」を学習し、本学ならではの教育を充実させるための講演会を実施している。
また、教育活動に関する点検評価の一環として、授業アンケートを実施している。
様々な設問が設定されているが、平成26年度から29年度において、「板書、視覚教材、資料、教科書などは効果的に使用されていましたか。」という設問には、75〜80%の学生が「そう思う」あるいは「ややそう思う」と回答している。
さらに、「学生の理解を助けるために教員は各種の補助手段を適切に用いていましたか。」という設問には、72〜78%の学生が肯定的な回答をしており、聴覚障害者である学生に対して、一定程度、効果的な「伝わる授業」が実現できていることがわかる。
ただし、個別の意見を丁寧に見ていくと、例えば、「一つ一つ丁寧に詳しく説明してくれたところがよかった」という意見がある反面、「説明が長く、資料を見れば分かる内容が多かったので省いても良いと思う」と感じる学生もおり、障害の程度や学力が異なる一人ひとりの学生に対して、さらに満足度を高めていく工夫が求められている。