命の守り人〜臨床工学技士〜
皆さん、臨床工学技士という医療職を知っていますか?
臨床工学技士とは、医師の監督・指示の下に医療現場で取り扱われる生命維持管理装置の保守・管理、操作、教育をする医療職です。
臨床工学技士が接する患者は、生命維持管理装置をはじめとした医療機器が無いと生きていけないという人がほとんどです。
臨床工学技士の業務はそういった患者の命を守ることです。
生命維持管理装置とは具体的に、心臓の働きを代行する人工心肺装置、腎臓の働きを代行する人工透析装置、肺の働きを代行する人工呼吸器のことをいいます。
また、臨床工学技士は「工学技士」とあるように、病院内の様々な分野で使用される約3000種類以上の医療機器が安全かつ適正に運用されるよう、保守・管理や他の医療職への教育を行っています。
つまり、臨床工学技士は縁の下の力持ち的な存在として患者の命と病院全体の安全を守っているのです。しかし、最先端技術が集約されている病院には、診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、看護師など様々な役割の人達が働いているため、一目では誰が臨床工学技士で、何をやっているかはわかりません。
そのため、臨床工学技士の「臨床」から医療に関わる職種、「工学」から機械を取り扱う職種とイメージをすることはできてもなかなかその業務内容を正確に答えられる人が少ないのです。
臨床工学技士は、医療現場において幅広い業務を受け持つとともに、チーム医療の一員としての役割や知識が求められます。したがって、チーム医療を進めるためには、他の医療職への理解と医療機器の安全・適正な運用を行える知識と技術が必要です。大学や専門学校など養成校では、医工学の知識の習得だけでなく、多職種間で互いに理解・協力し合える人材を育成することが必要であると考えます。
また、医療機器を安全かつ適正に運用できるよう、原理や構造についての幅広い知識や保守点検技術など情報処理能力を含めて総合的に習得することはもちろん、患者の利益を最優先に考えることのできる臨床工学技士を目指し、高い倫理観や個人情報の秘守義務などの社会ルール、さらに、臨床工学の専門的知識と技術を応用して現状における問題点を解決できる実践的能力、また、より質の高い医療を実現するための新たな医療機器や医療材料の研究・開発を模索できるような探求心や研究能力を身に付ける教育を行うことが大切であると考えます。
常に進歩し続ける医療の世界では、新しい医療機器の導入や新たな機能の追加が頻繁に行われます。臨床工学技士は、その度に取り扱い方法を習得するとともに、他の医療職にも操作方法を教育・指導することが求められています。医療において、今後益々、臨床工学技士の役割は大きくなり、必要不可欠な存在となっていくことでしょう。
命の守り人「臨床工学技士」という医療職に興味を持っていただけたら幸いです。