見過ごしたことに「へぇそうだったんだ」と気づく授業をめざして
東京造形大学が毎年実施するFD講習会の一つとして、昨年度後期は英語教授法「ベーシックイングリッシュ」講習会を英語専任・非常勤教員を主な対象に開催し、
この教授法のスペシャリストである元本学教授の相沢佳子先生がご講演とデモをなさいました。
基本英単語850語を体を動かしながら組み合わせて表現するさまは子供が英語を母語として習得する過程に近く、まさに言語は対人活動の基軸であると実感します。
外国語教授法(特に英語)といっても実に多種多様ですが、この教え方は母語を使わず外国語だけを使って学ぶダイレクトメソッドの一つとして大いに参考になりました。
私は東京造形大学で英語科目を担当しています。本学には英語が嫌いまたは苦手な学生が多く学生の大半が中学で学習した基礎から復習・発展するクラスを履修しています。
中学で学ぶ基礎と言っても軽視できず、英語母語・非母語話者が日常会話で頻繁に用いる表現の根本がここにあります。基礎レベルのクラスの大半は、最初は簡単な言い回しから文法・語彙・発音などの基礎をおさらいしつつ、
文レベルの表現を作り必要最低限の情報を伝えることを目指した授業です。文法など論理的な説明ばかりだと、英語の苦手な学生にはなかなか受け入れてもらえません。そこで私は学生の興味を引くために、
身近な例として日本語の中の外来語(借用語)に時々言及します。日本語としてカタカナで溶け込んでいる英語由来の言葉がいかに多く日常無意識に使われているかを意識させて元の英語を考えさせます。
例えば、「珍しい・格別の・唯一の・独自の」という意味を持ち「uで始まる単語」で日本語でもカタカナ4文字でよく使う、というヒントを与えても学生からなかなか答えが出ません。外来語「ユニーク」が日本語として定着しているため、
元の英語uniqueに由来することに結びつかないのでしょう。元の綴り・発音に接すると英語=別世界として捉えがちで、こうした日本語の中に潜んでいる外国語に気づきにくいものです。とりわけ美術・デザイン用語でカタカナ表記される語の大半が由来する元の英単語の存在を知り、
普段無意識に使っている言葉が「そういう意味だったのか」と気づいたら、この小さな発見を大切にしてほしいと思います。些細なことでも発見する場にしたいと願いながら授業をしています。