Japanese/Englishリンクお問い合わせ

特色ある教育の開発、教育力の向上をめざして

週刊・授業改善エッセイ
つばさとは?
つばさ連携校
事業内容
FDカレンダー
週刊・授業改善エッセイ
あっとおどろく大学事務NG集
 
 

石巻専修大学 丸岡 泰
(経営学部FD委員)

 私の大学では、昨年度から公開授業が始まりました。時間の都合の付く教員が同僚の授業を教室の後ろの席で参観し、講義方法を勉強する方式です。この機に、文科系の私が生まれて初めてS先生の「生理学」(学生約10名)の授業に出席することになりました。
授業では、プロジェクタで示された実験データについて、なぜそのグラフができるのかと質問が発されます。学生が手をあげて自分の考えを述べます。先生は首肯したり、首をかしげたりしながらそれを聞き、コメントします。良い答えには5点、3点など点を与え、それは授業の終わりに学生の自己申告により学籍簿に記録されます。
 先生は黒板の方を向いたり本を読んだりすることはなく、いつも学生の顔を見て問答をしかけます。点数が与えられることに誘発されているのか、よく学生の手があがります。私のゼミ(学生約10〜15名)で自主的な発言はほとんどありませんが、この授業ではとても多いのです。この教室に満ちた心地よい緊張感に、私は羨望の念を持ちました。
 この授業では「現象とメカニズムと意義の識別」が科学的姿勢とされているようでした。それは、講義方針の一部でもあると思われます。授業後の検討会で先生は、この授業では講義内容の系統性よりも議論と考え方を重視しているとおっしゃいました。講義は必ずしも系統的でなくてもよい、というお考えに、目からウロコが落ちた思いがしました。
 また、先生は学生のノートを授業の終わりに提出させ、正確に記録しているかどうかを採点しておられます。ノートは授業日の夕方には研究室前に置かれ、学生が持ち帰る仕組みです。手数のかかる仕事ですが、これが学生のやる気を引き出していると思います。
私もこの公開授業で見た方法の一部を、考え方の習得が重要な1年生向け必修の授業に取り入れてみました。板書していた細かい情報を少し減らし、学生への質問数を増やしたのです。100人を超える授業のため学生個々の発言を求めることはしませんが、答えの選択肢を並べ、正解と思うものに手をあげさせることで理解度を確認しています。
 その結果、基本的な考え方の確認については骨太の授業になったと思います。また、板書の時間が減り、学生の顔を見て話をする時間が増えました。表情からも理解度がうかがえるため、学生の把握という点では改善したと考えています。教壇と学生の席との空間に緊張感のある時間が少しは増えたと思います。
 ノートの採点はまだしたことがありません。学生数の多いことと時間的余裕のなさから、二の足を踏んでいます。しかし、それは必要だと思っています。授業中手を動かさない学生が多いためです。ノートの指導は授業の成果改善と学生のやる気につながると思われます。いずれ小規模の授業で試みてみたいものです。
 今日では、学生がやる気を出すよう工夫することも教員の仕事の一部なのだと思います。公開授業によって、その達人が一人、私の身の回りにいることに気付かされました。

   
  Copyright 2009 Yamagata University higher education research project center , All Rights Reserved.
 
このホームページに関するご意見・お問い合せは、山形大学高等教育研究企画センターまで。
山形大学 高等教育研究企画センター 〒990-8560 山形市小白川町一丁目4-12
TEL:023-628-4707 FAX:023-628-4720 k3cen@jm.kj.yamagata-u.ac.jp