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東日本国際大学 教授 倉田 貢
(経済情報学部)


 グッド・シティズンの育成を目指して

 現代の学生は、無気力であるとか、自主性がないとか批判されがちである。全般的な学習能力の低下も言われて久しい。本学でも、ご多分に漏れず、周りが進学するから自分も、という層がかなりいる。スポーツには熱中するが、勉学は二の次という諸君も少なくない。「学生の本分は勉学にあり」と叱咤しても全く痛痒を感じない剛の者も珍しくない。また、アルバイトの方が授業よりも社会勉強になるという口実で、出席回数を計画的に自己管理(?)し、必要最低限の成績・単位で済ませる要領の良い者もいる。勿論、家庭が経済的に苦しい中で長時間のアルバイトをせざるを得ず、勉学の時間が十分に確保できない者もいるので、それを責められない側面もある。これらの「当世学生気質(かたぎ)」は大学ユニバーサル時代を反映するものとも言えるだろう。
このような当世学生気質が広汎に見られる大学ユニバーサル時代は、「大学」という社会制度の存在意義または社会的使命をあらためて根底から捉え直すべき機会を我々に与えているのではないだろうか。今日の大半の大学は、社会のエリート層を育成する大学を除いて、「グッド・シティズン」(良き市民)を社会に送り出すことにその存在意義を見出し、そのことを最大の社会的使命とすべきではないか、と考える。
 しかし、グッド・シティズンの育成を目指すのはよいとしても、そもそもそれは何を意味するのか。グッド・シティズンとなるためには、正常な判断力を持たねばならず、その判断力の涵養には一定以上の教養と思考訓練を必要とし、また、職業を含めた社会生活全般を恙無くこなすためには、会話力を含めた社会適応力を身につけておかなければならない。カリキュラム編成時に考慮されるこれらのことは、グッド・シティズンとなるための要件ではあっても、グッド・シティズンそれ自体の定義ではない。育成すべきグッド・シティズンの具体像が曖昧では、カリキュラム編成の方針も曖昧になりかねない。
 グッド・シティズンとは、社会的繋がりの中で生きているという我々の社会性を洞察する能力を持つ人間であろう。社会的繋がりを形成・維持するためには一定の常識とスキルが必要であると理解することもこの洞察力に関係する。常識とは、本質的には、人間社会の本質をなす相互依存関係を認識することに依拠しており、また、技術的側面から言えば、この相互依存関係を円滑にするための社会的ルールの知識でもある。常識に基づいてこそ社会の円滑な統営が可能となる。また、社会的繋がりのためのスキルとは、読み書きだけでなく対話力等も含むコミュニケーションのための技術である。
 グッド・シティズンの育成を目指すとは、かつては大学入学前に身につけていたはずの「常識」やコミュニケーション・スキルを身につけるようにすることである。教員の役割は、このような社会的ルールと一定のコミュニケーション力が作用する具体的な「場」を、授業・生活指導等を通じて提供することにより、学生自身の内発的な「学ぶ力」「生きる力」を引き出すことにある。FD活動において、このような意味でのグッド・シティズンの育成を目指すためのノウハウを拡充させていくことが必要ではないか、と考えている昨今である。

   
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