西洋哲学史
 History of Western Philosophy
 担当教員:古川 英明(FURUKAWA Hideaki)
 担当教員の所属:人文学部人間文化学科
 開講学年:2年,3年,4年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
【授業概要】
・テーマ
「アテーナイ民主政とプラトーンの哲学」−−われわれが今日理解するような・科学と区別される学問としでの哲学は、ソークラテースとプラトーンの間において、しかもアテーナイ民主政への批判として成立してきたと、考えられる。本講義はアテーナイ民主政の理想と現実を、広く歴史や文芸の作品に探ったのちに、プラトーン、(プラトーンの作品に現れた)ソークラテースがペロポンネーソス戦争を間に挟む前五世紀後半のアテーナイ民主政といかに対決したかを見ることをつうじて、彼らにおいて成立した哲学の祖型を剔抉することを目指す。
・ねらい
時代とかかわり時代と対峙するなかでソークラテース、プラトーンにおいて哲学がどのように成立してくるのかを探ってみる。
・目標
中間試験で授業の理解度を確認し、学期末では講義の内容にもとづいて、プラトーンと民主政(広くは哲学することと生きること)について考えを述べてもらう。
・キーワード
教養(paideia) 民主政(demokratia) 哲学(philosophia) ペリクレース(Perikles) 国制(politeia)

【授業計画】
・授業の方法
引用文献のコピーと講義内容を印刷したものを使用します。ただし、受講者の理解を確認するための小テストを2〜3回実施します。
・日程
1.ペリクレースの国葬演説を、プラトーン『メネクセノス』の追悼演説、またリュシアースの葬礼弁論と比較する――三つの演説の共通点と差異点。
Thoukydides, Historiai, II 35-46, Platon, Menexenos, 236D-249C, Lysias, ii.
2a.ペリクレースが称えるアテーナイ人の「愛知(philosophein)」、――その「知(sophia)」とは何か Thoukydides, Historiai, II 40
2b ソークラテースがアテーナイ人に説き勧める「愛知」、――その「知(sophia)」とは何か Platon, Apologia Sokratous, 28E-29A, 29C-30B
3a.カッリクレースが勧める「教養(paideia)」としての「哲学(philosophia)」、――それが求める「知(sophia)」とは何か Platon, Gorgias, 485A
3b.ソークラテース「ぼくだけがほんとうの政治の仕事を行なっている」(Platon, Gorgias, 521D):民主政治への批判としての哲学、――それが求める「知」とは何か

【学習の方法】
・受講のあり方
引用著作(の一部)と講義内容をコピーしたものを資料として配布します。受講される皆さんは、講義担当者の説明をノート、またプリントに記入してください。
・予習のあり方
配布資料また引用された著作そのものを読んでみる。
・復習のあり方
三つの演説はどれも名文です(厳しいレトリック批判を展開したプラトーンがなぜ追悼演説を作成したのかは興味ぶかい問題ですが)。カッリクレースとソークラテースの対決にも息を呑むほどの迫力がある。著作そのものをよく味わってみよう。

【成績評価の方法】
・成績評価基準
理解度を確認する小テストを実施し、学期末に主体的な思考を評価する論述問題を課す。
・方法
欠席回数が授業回数全体の1/3を超える場合は、成績評価の対象としない。中間試験(小テスト2〜3回)30点、期末試験50点。授業への参加度など20点

【テキスト】
1.プラトーン(田中・池田訳) ソークラテースの弁明他 新潮文庫 2005年 438円
2.プラトン(加来彰俊訳) ゴルギアス 岩波文庫 1993年 570円
3.プラトン(津村寛二訳) メネクセノス(プラトン全集10) 岩波書店 1987年
4.トーキューディデース(久保正彰訳) 戦史・上 岩波文庫
5.リュシアス(細井敦子訳) コリントス戦争の援軍として斃れた戦士への葬礼弁論(西洋古典叢書・リュシアス弁論集) 京都大学学術出版会, 2001年
 3、4のうちのペリクレースの演説、5については、コピーを配布します。

【参考書】
加来彰俊 プラトンの弁明 岩波書店 2007年
斎藤忍随 プラトン 岩波新書 1972年
田中美知太郎 ソフィスト 講談社学術文庫 2002年
真下英信 ツキディデスが伝えるペリクレスの演説 大学書林 1991年

【その他】
・学生へのメッセージ
ギリシア語原文に言及することがありますが、ギリシア語の読解能力は必要ではありません。
・オフィス・アワー
木 14:50〜16:10 古川研究室

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