はばたくひと ♯35
大滝拓也
大学在学時にレースデビュー。
F1参戦を目指し歩みを進める。
2025.09.12


はばたくひと ♯35
大滝拓也
2025.09.12

山形大学在学時に「SRS-F(鈴鹿サーキットレーシングスクールフォーミュラ)」のオーディションに合格し、ホンダの育成ドライバーとして、フォーミュラカーレース「FIA-F4」でデビューした大滝拓也さん。2020年に「SUPER GT」のルーキーテストに合格し、現在は「RUNUP」の一員としてチームに帯同する傍ら、「全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権」や9月14日に鈴鹿サーキットで開催される「GT Asia選手権」へ参戦するなどして、「F1ドライバーになる」という夢の実現に向けて歩みを進めている。
14歳のときにドライビングシミュレーションゲーム「グランツーリスモ」で世界1位のタイムをたたき出したことをきっかけに、レーシングドライバーを志すようになった大滝さん。「兄の影響で小学校からバレーを続けていたのですが『カートをやりたい』と親に頼み、週末は山形や宮城、千葉のサーキット場へ連れて行ってもらい練習するようになりました」。4、5歳でカートを始めるドライバーも多いなか、ゲームで培った持ち前の運転センスを発揮し、1年ほどで東北大会優勝を果たすなどすぐに実力が開花。16歳でMAXクラス(125cc)のシリーズチャンピオンに輝いたことで自信をつけ、F1への道を本格的に目指すようになった。

15歳でレーシングカートを始め、翌年にはSUGOのMAXクラスで、世界大会に3年連続で進出したドライバーも参戦するなか、直接対決でシリーズチャンピオンを獲得。さらに2年連続でMAX FESTIVAL東北出身ドライバー唯一の決勝進出を果たした。
カートに取り組む一方で、車の水素エンジンの研究にも関心があった大滝さんは、山形大学工学部物質化学工学科へ進学し、大学生とレーサーの2足のわらじをこなす忙しい日々を送った。転機となったのはF1ドライバーへの最短ルートといわれる「SRS-F」のオーディションに合格したこと。全国から精鋭が集うなかで優秀な成績を収め、奨学金を受けられるスカラシップ候補者の一人に選出された。元F1ドライバーの中嶋悟氏にも成長の早さと将来性を評価され、ホンダの育成ドライバーとして「FIA-F4」のシートを獲得することができた。

山形大学在学時に世界的にも有名な本格的レーシングスクールである「SRS-F」のオーディションに合格し、スカラシップ候補者の一人にも選ばれた。
「FIA-F4」は国内を転戦し全14レースで争われる。大滝さんはレースに参戦しながらその費用を調達するため、2年生から大学を休学し、山形県内を中心に自らスポンサー集めに奔走した。「多額の費用を集めるのはもちろん大変でしたが、山形大をはじめ自分の活躍を信じて応援してくれる人たちが地元にいることは大きな励みになりました」と感謝する。

多くのドライバーに立ちはだかる壁となっているのが多額の参戦費。レース以外の日は1日3件という目標を立て飛び込みで企業回りを行った。
デビューイヤーとなる2016年に鈴鹿で初優勝を飾り、翌年は総合ランキング5位に入ったが3年目は成績が振るわず、さらに上のカテゴリーであるF3のシートには一歩及ばなかった。「現在F1で活躍する角田裕毅選手をはじめ、ライバルたちと戦うなかで自分に足りないものも見えた。だからといってここであきらめようとはせずに、別の道を探そうと気持ちを切り替えました」と話す。
次の舞台に選んだのが「SUPER GT」。これまでのフォーミュラカーと異なり市販車(通称・箱車)をベースとしたレーシングカーを用いるが、上位者にはF1を目指すために必須となるスーパーライセンスポイントが与えられる。大滝さんは2020年にSUPER GTのルーキーテストに合格。GT300クラスのチーム「RUNUP」のドライバーとしてスポット参戦し、3位表彰台を獲得するなど初年度から実力の高さを証明した。
その一方で2019、20年に「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」のグランツーリスモ部門に山形県代表として出場。現役レーサーがeスポーツの大会に出場することは、当時はまだ珍しく大きな注目を集めた。

2020年、SUPER GT300クラスのデビュー戦でタイムトライアル2位の結果を残し、2戦目では決勝3位表彰台を獲得した。

2019、20年に「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」グランツーリスモ部門の山形県代表に選出されたときの1枚。現在は「Saishunkan Sol 熊本」に所属し、JAF公認eモータースポーツリーグ「UNIZONE」に参戦。eスポーツの普及にも力を入れている。
RUNUPのドライバーとなって初めてフル参戦した昨年は、年間を通してマシンのコンディションが上向かなかったこともあり、表彰台を逃した。今年1年間はチーム事情などからシートを得ることはかなわなかったものの、9月14日に鈴鹿で開催される「GT Asia選手権」でハンドルを握ることが決定している。5月31日〜6月1日に行われた「スーパー耐久シリーズ 第3戦 富士24時間レース」では、大滝さんがドライバーの1人を担ったチーム「TRACYSPORTS with DELTA」がST-3クラスで見事優勝を飾った。その勢いを持続させ成績上位を狙う。

「スーパー耐久シリーズ 第3戦 富士24時間レース」で、「TRACYSPORTS with DELTA」の一員として参戦し優勝した。2019年に「SUPER GT」への挑戦を決意し、箱車の経験を積みたいと飛び込みで営業をかけていた時、唯一その場で乗せてくれたチームであり、恩も感じているという。
取材を行った7月上旬、大滝さんは今年の新たな挑戦として8月30・31日に宮城県のスポーツランドSUGOで開催される「全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権」への参戦に向けた準備の真っただ中にいた。レースへ参戦するに当たっては1千200万円ほど必要となるため、クラウドファンディングなども開設しながら資金集めに奮闘している。
「フォーミュラカーでのレースは実に7年ぶり。しかも1大会のみのスポット参戦ということで、条件はかなりシビアになりますが、表彰台の1番高い位置に上りたい」と意欲を見せる。このレースで良い結果を残せれば、国内最高峰のフォーミュラカーレース「スーパーフォーミュラ」に参戦する「TEAM MUGEN」のオーディションを受けられる可能性があり、大滝さんにとっては大きなチャンスだ。
最後にこれから社会へ出る学生に向けては一言「夢を持ってほしい」ときっぱり。「自分はF1ドライバーになるという目標に向かって歩んでいるところですが、必ず実現できると信じています。皆さんにも自分を信じ夢へ向かって突き進んでほしいと思います」とエールを送ってくれた。
★最新情報は大滝拓也OfficialSite https://otakitakuya.com/でご確認ください。

6月に岡山国際サーキットで行われた、全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権岡山大会のテスト走行に乗車。フォーミュラカーの感触をつかむ貴重な機会になった。
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おおたきたくや●山形市出身。2021年3月工学部物質化学工学科(現 化学・バイオ工学科)卒業。15歳でレーシングカートを始め、16〜18年にはF1の登竜門とされる「FIA-F4」に参戦。20年にSUPER GTルーキーテストに合格し東北出身者初のGTドライバーとしてデビュー。25年9月14日に開催される「GT Asia選手権」にチーム「RUNUP」から参戦予定。プロeスポーツチーム「Saishunkan Sol 熊本」所属。
※内容や所属等は2025年7月当時のものです。