はばたくひと ♯39
二瓶友岳
大学時代に自らの可能性を開拓。
ベトナムでAI開発に従事。
2026.05.15


はばたくひと ♯39
二瓶友岳
2026.05.15

大学卒業後ベトナムにわたり、現在日系ソフトウェア開発会社「Vitalify Asia(バイタリフィ アジア)」で働く二瓶友岳さん。在学中は、海外でのインターンや山形での地域活動に奔走。卒業研究で取り組んだAI開発の経験を糧に、新卒で同社に入社した。現在はプロジェクトマネージャーとして、クライアントである日本企業とベトナム人エンジニアの間に入り、仕事を円滑に進めるためのサポートなどを行っている。2025年9月には自らの挑戦を綴った著書「地方大学生の歩き方」を出版した。将来はベトナムに交流の場を作る夢を持ち、後輩たちへ「苦労の先には面白い未来が待っている」と挑戦の大切さを訴える。
幼いころから父親の仕事の関係で東北地方に足を運ぶ機会があり、東北を身近に感じていたという二瓶友岳さん。電気・情報関係が学べる東北の国立大学という選択肢の中から選んだのが山形大学工学部だった。在学中は本人いわくあまり勉強をせず、“未来を描くための実践”に明け暮れた。「学生大使」としてインドネシアで日本語を教えるプログラムに参加したり、ベトナムでのインターンシップを経験したりしたほか、山形県内の学生や社会人など20代が参加するコミュニティ「やまがた次世代会」の立ち上げや、学生向けのウェブメディアの運営にも携わった。
「大学入学時に『後悔しない大学生活を送る』『山形で活躍する』『人生を開拓する』の3つの目標を立て、行動を起こすことで自分の可能性を模索しました。このときの出会いは財産。大学卒業後もセミナーの講師に呼ばれたり、現在の会社に仕事の発注をいただいたり、山形を離れてからも覚えていてくださるのがうれしいです」と二瓶さん。
学外での活動で忙しい日々を送ったが、4年生の後期からは卒業研究に専念。当時所属していた研究室の横山道央教授の勧めもあり、米沢弁を標準語に翻訳するAIアプリの開発に取り組み、卒業研究発表会では優秀発表賞に選ばれた。「4年間で培ったプレゼン力や実行力が実を結び頂けた賞だと思う。今の仕事にもつながるAIに出合うきっかけをくれた横山先生にも感謝しています」と話す。

「山形で頑張る若者がつながれる場をつくりたい」との思いから「やまがた次世代会」を立ち上げた。在学中には、交流イベントを3回実施し、参加者同士の交流やゲストを呼んでのトークショーなどを行った。

大学を1年間休学し、ベトナム・ホイアン市で日本語教師をするインターンシップに参加。空いた時間は系列の飲食店の手伝いをするなどして、ベトナム語や英語でのコミュニケーションスキルを高めた。
学生時代にインドネシアやベトナムを訪れた経験から東南アジアに興味を持った二瓶さんは大学卒業後、新卒でベトナム・ホーチミン市にある、日系ソフトウェア開発会社「Vitalify Asia」に入社した。同社は2008年に創業し、主に日本企業向けに最新技術を活用したスマホアプリやウェブサービスの開発を中心とした事業を行っている。社員は約150人でその大半が現地のベトナム人。日本人は15人ほどが在籍している。二瓶さんはプロジェクトマネージャーとして日本人のクライアントからの要望を聞き、ベトナム人のエンジニアに伝える橋渡しの役目を担う。
「AIを使うプロジェクトが中心で、今はアバターと会話が楽しめるツールの開発などに携わっています。よく日本人が使う『いい感じにやっておいて』というような、あいまいな表現はこちらでは通用しないので、日本側の意図や求める水準を具体的に説明するのが私の仕事。難しい案件が入ったときはこれまで培ったAIの知見を生かしてエンジニアにアドバイスしたり、実際に制作のほうに直接入ってイメージを伝えたりもします」。
ベトナムでの生活は学生時代を含めて早5年。ベトナム人の印象は「みんな真面目で親切。周りにいる人は本業以外に何かしら仕事をしていたり勉強をしていたりしてそんなストイックな姿に日々刺激をもらっています」。二瓶さん自身も会社での仕事とは別にベトナムの個人や法人向けのウェブサービスのシステム開発に取り組んでいて、将来的にはコワーキングスペースを併設したカフェのような人が集まる場をベトナムに作る夢がある。

2023年には、山形大学主催のオンラインセミナーに招かれ、自身の経験から生成系AIの基礎や利活用の現状について講話を行った。

自宅近くのベトナム・ホーチミン市の眺め。「日本企業も多く進出していて生活に不便は感じません。スポーツはサッカーが人気で東南アジアの大会でベトナムが優勝すると、街中がお祭り騒ぎになります」と二瓶さん。
プライベートでは2024年に結婚し、昨年第1子が誕生した。結婚相手は、大学を1年間休学してベトナムでインターンシップをしていた際に出会った現地の女性で、現在の会社で働くきっかけをくれた存在でもある。「『地方大学生の歩き方』を出版しようと決めたのも子どもの誕生が一つの後押しになりました。人生の節目として、これまでの歩みを形に残しておきたいと思いました」。本書では大学時代に二瓶さんが興味の赴くままに挑戦し、時には失敗した経験をありのままにつづった。「さまざまな経験が将来にどうつながるのか当時は分かりませんでしたが、社会人3年目を迎えたくらいに、今の自分の糧になっていると確信が持てるようになりました。この本が誰かの一歩を踏み出す後押しになれば」と願う。
二瓶さん自身も「せっかく山形まで来たのだから、本が出せるくらいいろいろなことに挑戦しよう」と意気込んでいたものの、初めは「自分にできるのか」と尻込みすることもあった。きっかけをくれたのは大学1年の夏に大学で開かれた講演会で参議院議員の脇雅昭さんに掛けられた「やりたいことがあるなら、やるしかないだろう。『やるか、やるかだ』」。その言葉に背中を押され、言い訳を重ねていた自分から抜け出せたという。
海外で働く夢を持つ学生に向けては、「先輩を数珠つなぎに紹介してもらったり、地域の人や大学の職員を頼ったりして、自らコミュニケーションを取ってほしい」とアドバイスする。「茨の道でも自分で切り開いた先には、苦労した分だけ面白い未来が待っているはず。誰も教えてくれない自分の道は、自分で切り開くしかありません。あきらめずに挑戦を」そう力強くエールを送ってくれた。
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にへいともたか●東京都出身。2022年3月工学部情報エレクトロニクス学科電気電子通信コース卒業。同年、ベトナムの日系IT企業「Vitalify Asia」入社し、プロジェクトマネージャーとして活躍中。2025年9月にmotaとして電子書籍「地方大学生の歩き方」を出版。
※内容や所属等は2026年3月当時のものです。