まなぶひと #61
海藤優嬉音&坂上未桜&福原由騎
学生ボランティアが学びをサポート。
地域の子どもたちに居場所を提供。
2026.03.13

まなぶひと #61
海藤優嬉音&坂上未桜&福原由騎
2026.03.13
「勉強を頑張りたいけれど、塾に通うのが難しい」。そんな地域の子どもたちの学びを支えているのが、山形大学の学生ボランティアサークル「学び場プラス」だ。学校の宿題に取り組んだり、授業でわからなかった問題を質問したりと、子どもたちが自分のペースで学習できる「学び場」を提供。指導する学生にとっても、わかりやすく教える力や、相手の気持ちに寄り添う姿勢を学べる貴重な経験の場になっている。
毎週土曜17時から19時まで山形県総合社会福祉センター東部公民館で地域の子どもたちの学習や交流をサポートしている。
「学び場プラス」は地域の子どもたちに、無料の学び場を提供するボランティアサークル。人文社会科学部、地域教育文化学部(2026年4月より教育学部)、理学部、工学部の学生を中心に、25年度は29人が参加している。
「サポーター」と呼ばれる学生ボランティアたちが重視しているのが、利用する子どもたち一人ひとりのペースに合わせて学習を支援すること。黒板の前で一方的に教えるのではなく、子どもたちから話を聞き、実際に問題を解く様子を観察して「どこがわからないのか」「どこでつまずいているのか」確認し、寄り添っている。
「以前は私たちが教材を用意していたこともありましたが、今は宿題や問題集を子どもたち自身が持参し、質問されたところを教えるようにしています」と、代表を務める海藤優嬉音さん。「来てくれる生徒さんたちの個性は一人ひとり違います。自分から積極的に話しかけてくるタイプの子がいれば、黙って集中して取り組みたい子もいる。それぞれに合った距離感を心がけています」と説明する。
副代表の坂上未桜さんは「活動を通して気がついたのは『子どもたちは話をしたいし、私たちに聞いてほしいんだな』ということ。自分からは余計なことを言わず、できるだけ『聞く側』に徹するようにしています」と語り、同じく副代表の福原由騎さんも「『初めて接する大学生』に緊張している生徒さんもいます。初めからぐいぐい行きすぎないように気をつけています」と力を込める。
「これまで経験したことがないことに挑戦でき、一緒にカードゲームをしたり絵を描いたり、子どもたちと遊ぶのも好きです」と話す福原さん
現在の「遊び場プラス」は、小学生から高校生まで「学びたい」意欲がある地域の子どもたちなら誰でも安心して過ごせる「居場所」として広く開放するスタイル。
しかし、もともとは経済的な事情や家庭環境によって塾に通えず、子どもの学力格差につながっている現状を変えようと学生有志が開設したのが始まりだったという。
創設時代の「学び場プラス」メンバーである、中学時代の恩師から話を聞いたことが「学び場プラス」に参加するきっかけになったという坂上さんは「家庭の事情で塾に行ける子、行けない子がいる。山形大学は教員免許を取れる学部が多く、教師を目指す学生も集まっています。子どもたちにとってはもちろん、学生にとっても学びの場になる、と先生に参加を勧めてもらいました」と振り返る。
現在の「学び場プラス」では、子どもたちが自由に使って遊べるカードゲームやボードゲームなども用意。未就学児も遊びに来ることがあり、ただ勉強するだけでなく世代を超えた利用者同士、またボランティアの大学生らと交流できることも魅力になっている。
実際、支援する学生ボランティアにとっても、学び場プラスは貴重な経験と成長の場だ。未就学児から高校生まで幅広い年代、ときには学習障害などのある子どもたちとの交流を通じてコミュニケーションや問題解決など、実践を通して学ぶことができ、学生たちのやりがいや自信にもつながっているという。
「できることはささやかですが、自分が子どもたちやご家庭の支えになっていると実感でき、いい経験になっています」と海藤さん。「来てくれる生徒さんたちは真面目で意欲のある子が多く、私ももっと大学の勉強を頑張らなければと、刺激にもなります」と笑顔を見せる。
副代表の福原さんも「僕は中高生メインでよく勉強を教えていますが、難しい問題に取り組んでいる生徒が多く、人に教えることで自分自身の新しい気づきにつながることも。振り返りや学び直しの機会にもなっています」とうなずく。
坂上さんは「学び場プラスは大学の授業で学んだ知識の実践の場にもなっています。例えば分数の割り算を逆数にするという計算法。言語化して子どもたちに教えることで、自分自身も『なぜ逆数にするのか』理屈からあらためて理解できました」と話す。
「学び場プラス」の最新情報はInstagram (@manabibaplus)などSNSを通して発信している。
近年は遊びたい子どもたちと、静かに勉強に集中したい中高生とで活動のスペースを分けたり、勉強に専念するための自習日を平日の別会場に設けたりと、利用者の需要に合わせた開設スタイルも模索する。
一方で、支援を必要としている子どもたちや保護者に情報が届かず「こんな場所があることを知らなかった」という声は少なくない。「定期的に通ってくれている生徒さん、子どもたちは毎年10人前後。会場のキャパシティーを考えると、まだ受け入れに余裕があります」と海藤さん。坂上さんも「チラシやSNSを見て興味を持ってくれても、実際に足を運ぶのはハードルが高い。一歩踏み出してもらえるようにしていきたい」と意気込む。
学生たちも学業やアルバイトなど、それぞれのスケジュールをやり繰りしながら活動しており、人手も十分とはいえないのが現状だ。福原さんは「サポーターも子どもたちも人数の確保が課題。特に進学や進級のタイミングで来られなくなる学生や生徒さんは多い。自分たちの活動を、より広く知ってもらいたい」と呼びかける。
「学び場プラス」では活動を周知しながら新たなサポーターや利用者の参加につなげ、より豊かな学びと交流の場へと充実させていきたい考えだ。
つづきを読む
かいとう ゆきね●「学び場プラス」代表、理学部理学科2年。山形県山形市出身。理科が好きで細胞生物学を学ぼうと、山形大学に進学。中学校・高校の教員免許の取得を目指し、教職課程を履修している。山形大学吹奏楽団でも活動しており、打楽器を担当する。
さかうえ みお●「学び場プラス」副代表、地域教育文化学部地域教育文化学科児童教育コース2年。新潟県新潟市出身。小・中学校・高校の教員免許を取得でき、防災を学べる研究室があることが山形大学地域教育文化学部(2026年4月より教育学部)入学の決め手になった。趣味は旅行。
ふくはら ゆうき●「学び場プラス」副代表、理学部理学科1年、新潟県十日町市出身。理科が好きで「理学部のある県外の大学」として山形大学を選択。趣味は読書で、ミステリーや推理小説が好き。将来の進路選択に向け、さまざまなことに挑戦している。
※内容や所属等は2026年3月当時のものです。