まなぶひと #63

金山慎

「過去の自分の記録」を超える
現役医学生の二刀流の挑戦。

2026.07.15

「過去の自分の記録」を超える現役医学生の二刀流の挑戦。

「大学に入ってタイムマネジメントは身についたと思います」と語るのは、医学部水泳部の前主将・金山慎さん。医師を目指し、山形大学医学部で6年間のカリキュラムを学ぶ多忙な日々の中で、日本医科学生総合体育大会に毎年参加。3年連続で表彰台に上がるなど目覚ましい活躍を見せている。目下の目標は「自己ベストの更新」と「2種目制覇」。修学とサークルを両立させ、自ら成長を続けながら医学部水泳部のレベルアップにも努めてきた金山さんに、その思いを聞いた。

「質」を重視して効率化を工夫。
大学で再発見した競技の魅力

 医学部医学科4年の金山慎さんが、水泳と出会ったのは5歳のとき。兄や姉の影響で、スイミングスクールに通い始めた。
 努力が数字として結果に表れる手応えが、水泳に取り組む原動力になっていたという金山さん。受験勉強のため、高校3年の秋に中断するまで、高校水球部の部活動と、所属するクラブチームの掛け持ちの練習で「週7回プールに入る」水泳漬けの日々を送った。
 他方で、「水泳そのものを楽しいと思えるようになったのは、大学に入学してからでした」とも振り返る。
 「幼い頃は楽しかったはずですが、競泳の『競い合う』ステージに上がってからはタイムだけを追い求めるようになっていました。大会で友だちに会える楽しさはありましたが『試合があるから練習しなければいけない』という義務感だけで、競技そのものの楽しさはわからなくなっていたと思います」と打ち明ける。

「最近、練習量を補うために懸垂器具やダンベルを購入し、自宅で筋トレを始めました」と語る金山慎さん。「プールでの練習を効率よく“吸収”できるように、自分の体のキャパシティを上げています」

 山形大学で「医学部水泳部」に入部し「自分の経験を還元して、水泳の楽しさを伝えたい」と、スイミングスクールで未就学児から中学生までを指導するコーチのアルバイトも始めた。
 一方で講義や実習、課題、試験勉強などに追われ、自身の練習時間は激減。「今、泳げるのは多くて 週4 回、基本的に 2 回ぐらい。高校までは『質より量』という意識でしたが、大学では『質』を上げるところにフォーカスあてて練習するようになりました」と金山さん。
 「オン・オフの切り替えはできるようになりました。水泳で疲れて帰宅後の勉強は30 分程度だった高校時代と違い、大学では勉強時間もしっかり確保してアルバイトや水泳に取り組んでいます。特にテスト前は集中して勉強します」と語る。

毎年参加している「東日本医科学生総合体育大会」水泳競技の決勝。「1000 人前後が集まる大規模な大会。競技中はもちろん、泳ぎ終わった後のかけ声なども各大学が工夫していて、盛り上がりだけでいえば高校時代までの大会以上だと感じます」と金山さん

「楽しさ」を追求した
練習メニューを考案

 日頃の練習の成果を発揮する場となっているのが「東日本医科学生総合体育大会」。
 水泳に注力する強豪校も集まる高校時代までの大会とは異なり、医学生に限られた大会のため「しっかりやれば 1 位を取れるという勝手な思い込みがありました」と、金山さんは打ち明ける。
 「しかし実際出てみると一筋縄ではいかない、レベルの高い大会でした。エントリータイムに基づくコース順の配置から予感はありましたが、案の定負けてしまって悔しかった。以降、頑張る原動力になりました」

2025年度の日本医科学生総合体育大会は東京オリンピックでも使われた東京アクアティクスセンターが会場。「昂揚しましたが、泳ぎがついてこなかった」と金山さんは振り返る

 医学部水泳部に登録する部員は、現在60人あまり。活動日には健康づくりを目的とする初心者から、競技会での結果を追求する上級者まで、20人ほどがプールに集まり、個々のレベルや目的に合わせ4レーンに分かれて練習している。
 2025年度主将を任された金山さんは、レーンごとの練習メニューも考案。「『皆が楽しく続けられること』を大切にしていました」と力を込める。
 「クラブチームの練習を思い出したり、動画や雑誌で強豪チームのメニューを勉強したりしながら、自分たちのレベルに合わせてアレンジし、参加しやすく飽きのこない内容を心がけました」と金山さん。
 初心者を含む後輩の指導には、スイミングスクールのアルバイト経験も活かされたという。「教える立場になって、分かりやすい説明の仕方を考えたり、より効率的な練習法を勉強したり。気づいたことは、まず自分自身の泳ぎに落とし込んでみました。今まで『当たり前』だと思っていた自分自身の泳ぎとも、改めて向き合う良い機会になりました」

大会会場で、医学部水泳部の仲間と記念撮影。「皆が楽しそうな姿を見ると『やっててよかった』と思えます」と金山さん

経験が成長の糧に。
将来の夢に向けて邁進

 医学部水泳部主将としての経験は、金山さん自身に多くの学びや自己成長をもたらした。
「それまでは自分から積極的に動いたり、人に何かを言ったりするタイプではありませんでしたが、主将を務めて『全体』を見て皆が楽しむことを意識するようになり、気になったことは共有するようになりました」

将来は、医療現場に立つ医師を目指している金山さん。「医療は一人ではできません。将来、コメディカルの皆さんに自分が指示を出さなければならない場面、言うべきことをためらわずに言わなければならないような場面で、主将としての経験が活きてくると思います」と話す

 現在、金山さんが目下の目標に据えるのが「2種目制覇」だ。
 1 年次に400m優勝、 2 年次に200mと400mで2位、3 年次に200mで1位と、男子個人メドレーで毎年表彰されているものの、2種目同時優勝は成し得ていない悲願。
 併せて、大学卒業までに「自己ベストの更新」も目指している。
 「大学生になって知ったのが『マスターズ』では40代くらいの年齢になってからも自己ベストを出し続ける人がいるということ。高校時代と比べれば練習時間は取れなくなりましたが、マスターズの先輩たちを見ていると『いくらでもやり様はある』と感じます」
 さらに、将来のキャリアを見据えた努力も惜しまない。「将来は地元東北での貢献を考えていますが、海外にも興味があります。そのために必要なのが英語。CBT試験が一段落したら、臨床実習の勉強と並行して、いつでも海外に行けるような英語力を身につけていきたい」と意気込む。
 学業とサークルの両立に挑戦しながら、将来の夢に向かって邁進する金山さんの姿からは、大学生活の大きな可能性が感じられた。

競技後の医学部水泳部の集合写真。金山さんは自身の後を継いだ幹部たちに「大学から水泳を始めたメンバーが練習メニューも作ってくれている。さらに大会の準備など、水泳経験者の僕らと同じ役割を担いながら『芋煮会』などイベント企画の充実も目指している。キャパオーバーにならないようにしてほしいと思います」とエールを送る

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かなやま しん●宮城県仙台市出身。2025年度医学部水泳部主将。中学2年で医師を志し、東北地方に根付いた環境に惹かれて山形大学医学部に進学。入学当初は病理学に興味を持っていたものの臨床医学を学ぶ中で「どの診療科も面白い」と視野が広がり、幅広い選択肢から検討するように。「これから臨床実習や研修を通して、将来を模索していこうと思っています」
※内容や所属等は2026年6月当時のものです。

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