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「蔵王山測候所」の内部構造・防風石垣の存在が明らかに 〜昭和22年米軍撮影の空中写真から測候所の場所を特定〜

掲載日:2021.08.12

本件のポイント

「蔵王山測候所」風よけの石垣跡
の画像
「蔵王山測候所」風よけの石垣跡

  • 地蔵岳山頂にあった「蔵王山測候所」の内部の様子がわかりました。また、「蔵王山測候所」は風よけの石垣(防風石垣)で囲まれていたことがわかりました。
  • 現地調査によって、人工的に積み上げられた石垣が見つかりました。
  • 昭和22年9月に米軍よって撮影された空中写真に「蔵王山測候所」が写っていたことから、「蔵王山測候所」の場所が特定でき、また、見つかった石垣が風よけのための石垣跡と判断されました。

概要

 蔵王山地蔵岳山頂には、昭和18年9月から昭和22年9月まで中央気象台によって「蔵王山測候所」が設置されていましたが、正確な場所や内部の様子はわかっておりませんでした。
 このたび、「蔵王山測候所」にお勤めであった梛野栄司(なぎのえいじ)氏(山形市)に書いていただいた図面から、測候所の内部の様子がわかりました。また、測候所は、東側を除き、風よけのための石垣で囲まれていたことがわかり、現地調査から人工的に積み上げられたと考えられる石垣が見つかりました。
 昭和22年に米軍によって撮影された空中写真に「蔵王山測候所」が写っており、その場所が特定され、見つかった石垣の場所が、写っていた「蔵王山測候所」と一致したことから、風よけのための石垣跡と判断できました。

詳しくはこちら(プレスリリース)をご覧ください。

これまで

 蔵王山の地蔵岳山頂には、軍の要請を受けた中央気象台によって、昭和18年9月から昭和22年9月まで、「蔵王山測候所」が設置されていました。
 これまで、「蔵王山測候所」の気象観測記録・写真・絵葉書などが見つかっていました。一方、「蔵王山測候所」を示す地図や位置情報(北緯38度9分、東経140度26分、海抜1760m)はありましたが、具体的な場所や「蔵王山測候所」の内部や外の様子もわかっていませんでした。

測候所の内部の詳細と風よけの石垣について

「蔵王山測候所」にお勤めであった梛野栄司氏からお話を聞く機会があり、「蔵王山測候所」の内部の詳細を図面に書いていただきました(図1)。山形地方気象台が平成4年に出版した「山形の気象百年」によりますと、面積は42.4坪(140.2平米)とのことでした。図面から考えますと、南北20m位、東西7−8m位の大きさではなかったかと推測されます。
 また、「蔵王山測候所」は、蔵王にあるお地蔵さんから地蔵岳山頂までの山道を登りきったすぐの所にあったとのことです。建物は平屋建てで測風棟のみ三階建て、入口はお地蔵さんからの山道に面した北側、測風棟は南側にあったとのことです。入口付近の床はコンクリートだったようです。

石垣の調査

 梛野氏によりますと、「蔵王山測候所」は風速70mに耐えるように設計されていたそうで、「蔵王山測候所」の周囲には、東側を除き、風よけのための石垣(高さ1−1.5m位、幅70−80cm位)があったとのことでした(図2)。石垣は「蔵王山測候所」の周囲を囲んでいたことから、西側は20m位、南側は10m位、北側は7−8m位の長さではなかったかと推測されます。なお、梛野氏が1980年代に地蔵岳に登った際には石垣が残っていたとのことでした。
 空中写真やGoogle Earthなどは、いずれも真上から撮影されていることから、石垣の有無は判別できませんでした。令和3年6月15日に地蔵岳山頂で石垣の調査を行った結果、人工的に積み上げられたと考えられる石垣(長さ10m位、高さ50cm位、幅70−80cm位)を確認しました(図3)。図5に最新の空中写真(国土地理院)を示しました。上が北で、南北の白い線はお地蔵さん(北側)から地蔵岳(南側)に向かう山道です。石垣は、山道を登って10m位南にいったところにあります。この石垣はハイマツに覆われている所もあることから、最近に作られた物であったり、他にあったものが移動された物ではないと考えることができます。一方、昭和20年当時と比べて高さが低く、長さが短くなっておりました。

昭和22年米軍撮影の空中写真

 「蔵王山測候所」の場所を特定するとともに、見つかった石垣が風よけの石垣か否かを判断するため、歴代の国土地理院の空中写真を調べました。
 米軍は昭和21年から全国各地で空中写真を撮影しています。蔵王については、昭和22年9月7日撮影のものから3枚、昭和22年11月13日撮影のものから4枚見つかりました。図4に昭和22年9月7日に撮影された空中写真の1枚を示しました。上が北で、南北にある白い線はお地蔵さんから地蔵岳に向かう山道です。地蔵岳山頂に2つの建物が写っています。山道を上がってすぐにある建物が「蔵王山測候所」で、その右手側にある建物が「東北帝国大学蔵王高層気象着氷対策研究所」と考えられます。これによって「蔵王山測候所」の場所が特定できました。また、空中写真に写っている「蔵王山測候所」は、今回見つかった石垣の位置も一致することから、見つかった石垣は「蔵王山測候所」の風よけのための石垣跡と判断されました。また、今回見つかった石垣は、「蔵王山測候所」の西側にあった石垣の南半分程度が残った石垣跡と考えられます。

意義と今後の展望

 地蔵岳は周囲の山々を撮影するのに好適なスポットして利用されています。しかし、戦時中、地蔵岳に「蔵王山測候所」と「蔵王高層気象着氷対策研究所」があったことについては全く知られていません。石垣跡は戦争遺跡であり、その存在を伝えていく意義は大きいと考えられます。

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