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世界初 IXPE衛星によるベラパルサー星雲のX線観測により究極的に強く偏光したX線が観測 されました

掲載日:2023.01.12

本件のポイント

  • X線の偏光撮像が行える世界初のIXPE衛星によりベラパルサー星雲※のX線偏光観測が世界で初めて行われました。
  • 予想外に強く偏光したX線※が検出されました。それは究極的に美しく整列した磁場が存在する事を意味します。
  • 今後同様の天体を解析する事で、パルサー星雲の磁場構造や粒子加速の起源に迫る研究が進展していくでしょう。

概要

 重い星は一生の最後に大爆発を起こします。この爆発の中心部には、中性子星と呼ばれる非常に高密度かつ強磁場の天体が形成される事があります。パルサーとも呼ばれる中性子星は高速で回転しており、回転エネルギーと磁場のエネルギーを使って電荷を持った粒子(荷電粒子)を周囲に吹き飛ばします。この荷電粒子は、爆発で吹き飛んだ周辺の物質にぶつかりX線を出します。そのためパルサーの周りには、X線を放出するパルサー星雲と呼ばれる天体がしばしば観測されます。X線の偏光が観測されると、X線が放出されている場所の磁場を可視化する事ができます。しかしX線の偏光観測は難しいため、今まで観測が行われた天体はカニ星雲だけでした。そしてその偏光度もカニ星雲全体で見ると精々20%でした。今回IXPE衛星で観測したベラパルサー星雲もカニ星雲と同種の天体であり、いずれもパルサー星雲であるため、当初その程度の偏光度を期待していました。しかし予想に反して45%と2倍以上高い偏光度がベラパルサー星雲では観測されました。また局所的には60%も偏光している場所があり、この様な高い偏光度は磁場が究極的に綺麗に整列していない限りあり得ません。一体カニ星雲とベラパルサー星雲ではどのような違いがあるのか、爆発してから経過した時間なのか、それとも爆発時の環境の違いなのか、答えはまだ出ていません。しかし今後IXPE衛星が多くのパルサー星雲を観測しサンプル数を増やすことで、その謎を解明することが期待されます。

 詳しくはこちら(プレスリリース)をご覧ください。

背景

 天体から来るX線の偏光観測は1970年代に行われた事がありますが、X線の偏光検出は非常に難しいため検出器の性能が十分ではなく、カニ星雲という天体に対してしか有為な観測を行うことができませんでした。しかし50年の時を超え、NASAマーシャル宇宙飛行センターとイタリアの研究機関によって開発されたX線偏光撮像衛星IXPEは、以前の衛星に比べ100倍の感度を達成し、2021年12月に打ち上げられました。IXPE衛星は米国とイタリアが主導する国際プロジェクトですが、日本からも山形大学、広島大学、理化学研究所、大阪大学、千葉大学、名古屋大学、東京理科大がデータ解析やソフトウエアの解析に参加しており、その科学的な成果の創出に貢献してきました。今回のベラパルサー星雲から強く偏光したX線が検出された事は予想外であったため、IXPE内の幾つかのグループで独立してデータ解析を行い、結果に間違いがないかを確認しました。この解析に山形大学も参加し、他のグループと同等の結果を得ました。山形大学理学部の研究紹介のページにはベラパルサー星雲以外の結果も紹介されています。

  2022年12月21日(米国時間)、IXPE衛星によるベラパルサー星雲の観測結果がNature誌に掲載されました。

用語解説

ベラパルサー星雲:パルサー星雲と呼ばれる天体の種族があり、今まで幾つも宇宙の中で見つかっています。その中の一つがベラパルサー星雲です。

偏光:X線は空間を伝わる際に進行方向に対して横方向に振動しながら伝わります。その波打っている振動方向を偏光方向と呼びます。多くのX線の偏光方向を調べ、その方向が非常によく揃っている場合に強く偏光していると言います。逆に方向がバラバラな場合は偏光が弱いと言います。またその波の振動方向を偏光方向と呼びます。

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