







ホーム > 新着情報:プレスリリース > 2025年08月 > 学長定例記者会見を開催しました(8/7) > 虫害に伴うアイスモンスターの大きさ(太さ)の変化 〜2019年以降、急速にスリム化が進み、淀み線ができなくなっている〜
掲載日:2025.08.07

▲ 2024年10月5日 蔵王 2025年2月15日
2013年ころから蛾(トウヒツヅリヒメハマキ)の幼虫による食害によってオオシラビソは枝葉を失って枯死し、オオシラビソにできるアイスモンスターは細くなっている。アイスモンスターについてSS-S-A-B-C-Fの6段階を設定し、虫害に伴うアイスモンスターの大きさ(太さ)の変化を検討した。2018年頃までは顕著な変化は認められなかったが、2019年以降、急速なスリム化が進み淀み線ができなくなっていることが分かった。
詳しくはこちら(リリースペーパー)をご覧ください。
樹氷にはエビノシッポとアイスモンスターの二種類があります。エビノシッポは、過冷却水滴がオオシラビソ(アオモリトドマツ)に衝突することで凍って氷となったものです。一方、アイスモンスターは、エビノシッポの隙間に吹雪の雪が吹き込んで、エビノシッポと雪が焼結(*1)して氷の塊となったものです。最初にできる氷の塊は小さなものですが、小さな塊が連結することで大きな氷の塊に成長してアイスモンスターとなります。
蔵王では2013年ころから蛾(トウヒツヅリヒメハマキ)の幼虫による食害によってオオシラビソの葉は褐色化し、2016−2017年頃には葉が失われました。2017−2018年からは枝の脱落が発生しています。なお、2015年ころからはトドマツノキクイムシの穿孔も発生しました。これらの虫害によって、アイスモンスターの元になるオオシラビソは枯死(立ち枯れ)しました。オオシラビソが枝葉を失うに伴って、冬季にできるアイスモンスターは細くなっています。しかし、アイスモンスターの大きさ(太さ)の変化について定量的に表現されたことはありませんでした。一方、地球温暖化が進むことでアイスモンスターのスリム化も進んでおり、アイスモンスターの定義が昔と比べて拡大されているとも言われてきました。また、2025年冬季は10年ぶりの大きさと言われましたが根拠か不明でした。今回、アイスモンスターの大きさ(太さ)についてSS-S-A-B-C-Fの6段階(*2)を設定し、オオシラビソの枯死に伴うアイスモンスターの変化を検討しました。
アイスモンスターの大きさ(太さ)は2013年から2018年ころまでの顕著な変化は認められませんでしたが、2019年以降に急速なスリム化が進んでいることが分かりました。アイスモンスターの大きさ(太さ)を定量化することで、大きさ(太さ)の変化を時期ごと・高さごとに示すことができるようになります。
結果
オオシラビソは蛾の幼虫による食害によって2013年ころから葉が褐色化しはじめ、2016−2017年ころには葉の脱落が進むとともに褐色化したオオシラビソの範囲は拡大しました。2017−2018年ころからは枝の脱落が目立ち始め、2025年現在では電信柱のような形となってしまったものや倒木したものもあります。一方、2013年から2018年頃まではアイスモンスターに顕著な変化は認められませんでしたが、2019年以降、アイスモンスターのスリム化が急速に進んでいます。
1933年以降について同じようなアングルで撮影された蔵王山およびアイスモンスターの写真を集めてアイスモンスター大きさ(太さ)とでき方を検討しました(【蔵王山の写真】 【アイスモンスターの写真】参照)。
虫害が生じている標高1600m以上のアイスモンスターについて(図 アイスモンスターの変遷)、戦前はSSが、戦後はS-Aが主体でした。食害の起こった2013年頃は、オオシラビソの葉が失われてもアイスモンスターの形は保たれていましたが、2017−2018年ころから枝の脱落が目立ち始め、2019年頃に枝の半数近くが失われたことでオオシラビソへの着氷雪量が急激に減少し、アイスモンスターのスリム化が顕著になったと考えられます。
アイスモンスターのスリム化が進んだ2019年以降に限ると、厳冬多雪傾向(オレンジ)ではA-B〜B〜B-C、暖冬少雪傾向(緑)ではB-C〜B〜C-Fでした。また、厳冬多雪傾向にあった2025年の場合、虫害が生じた標高1600m以上のアイスモンスターはBでしたが、虫害の生じていない標高1600−1500mのアイスモンスターはS-Aでした。アイスモンスターの太さを定量化することで、時期ごと・高さごとのアイスモンスターの状況を示すことができるようになります。

▲図 アイスモンスターの変遷

▲2013年10月11日(山形森林管理署)

▲2020年(武田清蔵撮影)

▲2021年8月7日(原田隆人撮影)

▲2022年8月10日(原田隆人撮影)

▲2023年7月30日(原田隆人撮影)

▲2024年10月5日(原田隆人撮影)

▲2025年5月24日(原田隆人撮影)
アイスモンスターの写真

▲1933年(長澤壽三撮影)

▲1944年2月3日(平山栄伸撮影)

▲1970年ころ (山形県観光便覧)

▲1999年1月18日(武田清蔵撮影)

▲2007年2月7日 (柳澤)

▲2009年2月3日(柳澤)

▲2011年2月24日(原田隆人撮影)

▲2015年1月(原田隆人撮影)

▲2018年2月2日(柳澤)

▲2019年2月26日(原田隆人撮影)

▲2020年2月25日(原田隆人撮影)

▲2021年1月25日(原田隆人撮影)

▲2023年2月16日(原田隆人撮影)

▲2023年2月16日(原田隆人撮影)

▲2024年2月15日(原田隆人撮影)

▲2025年2月15日(原田隆人撮影)
用語解説
*1 焼結:付着力のない乾いた零度以下の雪がエビノシッポと合体して氷の塊となること。
*2 淀み線:木が太いことで風上側で風が淀んでしまい、過冷却水滴や雪の供給・付着が起こらなくなることで、アイスモンスターの風上側に生じた凹み。
*3 アイスモンスターの太さによってSS-S-A-B-C-Fの6段階を設定した。SSは幹枝葉を含めた木の太さは2―3mであるが、付着している樹氷が1m―1m以上となることから、アイスモンスターが太さ5−6mの達することがある。このため、風上側で風が淀んで着氷雪が減少したことでアイスモンスターの風上側に顕著な凹みである「淀み線」が生じている。Sは太さ2―3mで、付着している樹氷は数10―50cm程度、「淀み線」があるもの。A・B・Cは太さ1m程度、太さ1m〜50cm、太さ50cm程度で、付着している樹氷は10―数10cm程度であり、「淀み線」がはっきりしないもの。Fは太さ20-30cmで、付着している樹氷は数―10cm程度でアイスモンスターではないものである。【アイスモンスターの大きさ(SS-S-A-B-C-F)とでき方の違い】参照。
●F(木の太さ20−30cm)


●C(木の太さ50cm)


●B(木の太さ50cm-1m)


●A(木の太さ1m)


●S(木の太さ2-3m)


●SS(木の太さ5-6m)

