







ホーム > 新着情報:プレスリリース > 2025年11月 > 学長定例記者会見を開催しました(11/6) > サステナブルな有機薄膜トランジスタ製造技術を開発 ~電子ペーパー/フレキシブルOLEDを駆動~
掲載日:2025.11.06

山形大学 有機エレクトロニクスイノベーションセンター(INOEL)の竹田らの研究チームは、東ソー株式会社(材料開発)、およびE Ink社(電子ペーパーのフロントプレーン供給)との連携により、常圧・低温(160℃以下)の印刷/溶液法を主体とした製造プロセスで、有機薄膜トランジスタ(OTFT)アクティブマトリクス・バックプレーンを作製しました 。山形大学が印刷技術/プロセス開発を担い、東ソー株式会社が有機半導体などの材料開発を担うことで、高精細な反転オフセット印刷(ROP)によって最小線幅10 µmという高解像度電極パターンを可能にし、製造された高密度なバックプレーンは、電子ペーパーおよびOLEDディスプレイの駆動に成功しました。従来の製造方法に必要な高温や真空装置を排除したことで、エネルギー消費と材料廃棄を大幅に削減できる、環境に配慮したサステナブルな製造方法が確立されました 。この成果は、今後のフレキシブル・省電力ディスプレイやウェアラブルデバイス、低コスト表示デバイスへの展開が期待されます 。本成果は、科学誌「Advanced Science」に掲載されました。(論文情報:タイトル:Low-Temperature, Sustainable Manufacturing of Printed OTFT Backplanes for Electrophoretic and OLED Displays, 著者:Y. Takedaら、DOI: 10.1002/advs.202514091, Back Coverに選出)
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近年、紙の代替として情報を表示する電子ペーパーの普及が進んでいます。特にスーパーや小売店では、紙の値札に代わり、瞬時に情報を更新できる電子ペーパーの値札が一般化しつつあります。しかし、これらの電子ペーパーやフレキシブルディスプレイの製造には、依然として高温や真空といった特殊な製造環境が必要であり、エネルギー消費の増大やコスト上昇、環境負荷が課題となっていました。
こうした課題を解決するため、山形大学 有機エレクトロニクスイノベーションセンター(INOEL)は、長年培ってきた印刷プロセスによる電子デバイス製造技術を基盤に、東ソー株式会社の印刷可能な有機半導体などの材料開発およびE Ink社の電子ペーパー用フロントプレーン技術を融合した共同研究を開始しました。
この三者連携により、低温・常圧で製造するサステナブルな印刷製造プロセスの開発が実現しました。
山形大学・東ソー株式会社・E Ink社らの共同研究チームは、真空や高温を必要としない印刷エレクトロニクス技術を用い、有機薄膜トランジスタ(OTFT)をアクティブマトリクス構造で形成しました。山形大学は、反転オフセット印刷(ROP)による高精細電極形成プロセスや、OTFT作製プロセスの最適化や特性改善を担当。東ソーは、印刷適性に優れた有機半導体インクや絶縁膜材料、バンク材料等の開発を担当しました。さらに、E Ink社は電子ペーパー用フロントプレーンを提供し、最終的に山形大学で印刷型バックプレーンとの貼り合わせ・駆動実証を行いました。
これらの要素技術の統合により、常圧・低温(160℃以下)環境で作製したOTFTバックプレーンが、最小線幅10 µmの高精細電極パターンを有し、電子ペーパーおよびOLEDディスプレイの駆動に成功しました。
この結果、真空蒸着やフォトリソグラフィ工程を必要としない環境調和型製造プロセスの有効性が実証されました。
本研究で確立した、低温・常圧・印刷プロセスによるサステナブルな製造技術は、従来の製造方法に比べて環境負荷と製造コストを大幅に低減します。これにより、スーパーの値札など既存の電子ペーパー用途に加え、より薄く・軽く・曲げられるフレキシブル電子ペーパーの普及が加速し、ウェアラブルデバイスや多様な情報表示用途など、幅広い分野での応用が期待されます。
一方で、実用化に向けては、有機薄膜トランジスタ(OTFT)の性能ばらつきの改善やさらなる高性能化、プロセスの安定化など、解決すべき課題も残されています。また、近年ではフルカラー表示が可能な電子ペーパーも登場しており、これらを駆動できる高精細かつ信頼性の高いバックプレーン技術の確立が今後の重要な研究テーマとなります。
今後は、山形大学・東ソー・E Inkの三者がそれぞれの強みを活かし、材料開発・プロセス技術・実装デバイスの各側面から協働を一層深化させることで、環境と調和した次世代ディスプレイ製造技術の社会実装を目指してまいります。これらの取り組みを通じて、持続可能なエレクトロニクス産業の発展に貢献していきます。
1.有機薄膜トランジスタ(OTFT:Organic Thin-Film Transistor)
半導体材料に有機物を用いたトランジスタ。薄く、軽く、曲げられるという特徴から、フレキシブルディスプレイなどの次世代エレクトロニクスへの応用が期待されています。
2.印刷エレクトロニクス(Printed Electronics)
導電性インクや半導体インクを印刷技術で塗布し、電子回路やデバイスを作製する技術。従来の製造プロセスに比べて、低コストで環境負荷が低い製造方法として注目されています。
3.反転オフセット印刷(ROP:Reversed Offset Printing)
本研究で活用された高解像度印刷技術。転写体上にインクを塗工し、半乾燥(流動性が無い)状態で、印刷版でパターニング、基材へ転写することで微細なパターンを形成します。
4.電子ペーパー(e-paper)
電気の力で表示を書き換え、一度表示すると電力を消費せずにその状態を保持できるディスプレイ。紙のように目に優しく、屋外でも視認性が高いのが特徴です。スーパーの値札や電子書籍リーダーなどに使われています。
5.アクティブマトリクス・バックプレーン(Active-Matrix Backplane)
ディスプレイの画素を個別に制御するための回路基板。有機薄膜トランジスタ(OTFT)を多数配置して作製されます。
6.サステナブル(Sustainable)
持続可能であること。本研究では、製造プロセスにおけるエネルギー消費や材料廃棄を削減し、環境への負荷を低減する「サステナブルな製造」を実現したことを指します。
7.フロント プレーン ラミネート(Front Plane Laminate)
電子ペーパーにおいて、表示を担う最上層部分。電気信号によって微小なカプセル内の黒白粒子を移動させ、画像や文字を表示します。バックプレーンで生成された信号を受け取って駆動されるため、電子ペーパーの表示性能を左右する重要な構成要素です。本研究では、E Ink社がこのフロントプレーンを提供し、山形大学および東ソーと連携して、印刷法で作製した有機トランジスタバックプレーンとの貼り合わせ・駆動実証を行いました。