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掲載日:2025.12.04

▲ 山体崩壊(蔵王山地質図2015に加筆)
瀧山は10万年前には1500mの高さがあり北西の季節風を遮っていたが、4−8万年前に山体崩壊したことで季節風が蔵王山に衝突するようになった。最終氷期が終わり対馬暖流が流れ始めたのは10000年前頃、針葉樹が分布したのは3000年前頃、オオシラビソが分布したのは1000年前頃からである。過冷却水滴を含んだ北西の季節風が蔵王のオオシラビソに衝突することで氷化して「エビノシッポ」となる。季節風により蔵王は常に吹雪いている。「エビノシッポ」と雪が焼結(合体)して氷塊である樹氷(アイスモンスター)ができるようになったのは1000年前頃からである。
詳しくはこちら(リリースペーパー)をご覧ください。
11月1日にオンエアされましたテレビ番組におきまして、瀧山の山体崩壊によってスキーに適した傾斜地と蔵王温泉ができたこと、樹氷(アイスモンスター)のできかた、蔵王が人気のスキーリゾートとなった理由等が放送されました。一方、瀧山の山体崩壊と蔵王の樹氷の生成の関係については触れられませんでした。本報告では瀧山の山体崩壊によって樹氷ができる条件の一つが整ったことについてお話したいと思います。
樹氷(アイスモンスター)
冬季にシベリアから吹いてくる北西の季節風は日本海を流れている対馬暖流から蒸発した水分を取り込みます。季節風は朝日連峰に衝突・上昇することで断熱膨張して雪雲となります。雪雲の上部1500m前後(1400-1600m)には零度以下でも凍らない過冷却水滴帯が形成されています。過冷却水滴は北西の季節風によって蔵王まで運搬され、蔵王に自生しているオオシラビソに衝突することで氷化して「エビノシッポ」の樹氷となります。北西の季節風は蔵王山を上昇して雪雲を形成することから、蔵王山は常に吹雪となっています。吹雪の雪が「エビノシッポ」に吹付け、「エビノシッポ」と雪が焼結(合体)することで巨大な氷の塊である「樹氷(アイスモンスター)」になります。
4−8万年前、瀧山は水蒸気爆発とそれによって生じた地盤への亀裂によって山体崩壊を起こしました。崩壊量は3-5km3であり、山体崩壊によって直径およそ3kmのお椀形の凹みが生じています。現在の瀧山は火口壁の名残で最高標高は1362mです。また、崩壊によってできた凹みは蔵王温泉となっており標高はおよそ900mです。
崩壊量から計算すると、崩壊する前の瀧山は現在より少なくとも600mは高かったことになります。蔵王温泉の標高が900mであることを考えると、崩壊前の瀧山は少なくとも1500mの高さであったと推定されます。一方、北西の季節風が飛来する高度はおよそ1500mです。瀧山は蔵王山の北西方向にあることから、山体崩壊する前の瀧山は北西の季節風を遮っていましたが、山体崩壊によって季節風が蔵王山に衝突できるようになったことになります。

▲図1 およそ10万年前の蔵王温泉の概念図
(蔵王山地質図2015に加筆)

▲図2 現在の蔵王温泉の概念図
(蔵王山地質図2015に加筆)
瀧山の山体崩壊と樹氷(アイスモンスター)の生成
10万年前、蔵王山(1800m)の北西側に瀧山(1500m)があり、北西の季節風を遮っていました。4−8万年前、水蒸気爆発に続く瀧山の山体崩壊によって北西の季節風が蔵王山に衝突できるようになり、樹氷ができる条件の一つが整いました。
およそ10万年の周期で氷河期と間氷期が繰り返されています。最終氷期のピークは19000年前頃です。気温の上昇による氷河の融解によって対馬暖流が本格化したのは10000年前頃です。5000年前頃に温暖はピークとなり、その後、気温は低下に転じます。針葉樹が分布域を拡大したのは3000年前頃で、オオシラビソ(アオモリトドマツ)が分布したのは1000年前頃からです(2023年3月9日学長定例記者会見「東北地方で現在の様な樹氷(アイスモンスター)ができるようになったのは1000年前頃からであることが分かりました」)。
朝日連峰で生じる過冷却水滴帯の高さは1500m前後と推定されます。過冷却水滴を含んだ北西の季節風は蔵王山のオオシラビソに衝突して氷化して「エビノシッポ」となります。北西の季節風は蔵王山に衝突・上昇することで断熱膨張して雪雲を形成します。冬季、蔵王山は常に吹雪となっています。「エビノシッポ」と吹雪の中の雪がオオシラビソの上で焼結(合体)することで巨大な氷塊である樹氷(アイスモンスター)になります。したがって、現在のような樹氷(アイスモンスター)ができるようになったのは1000年前頃からと考えることができます。
なお、樹氷の生成には、瀧山の山体崩壊と吹雪となっている蔵王山の2つの存在が必要です。

▲図3 およそ10万年前の断面概念図

▲図4 4-8万年前の断面概念図

▲図5 およそ2万年前の断面概念図

▲図6 およそ5000年前の断面概念図

▲図7 およそ3000年前の断面概念図

▲図8 およそ1000年前の断面概念図