







ホーム > 新着情報:プレスリリース > 2026年05月 > 学長定例記者会見を開催しました(5/7) > 竹田泰典准教授ら、日本機械学会賞(技術)受賞~低温・省エネ印刷で実現した積層触覚センサが、協働ロボットの“触れる知能”を加速~
掲載日:2026.05.07

本件のポイント
概要
「日本機械学会賞」は本会創立60周年(1957 年)記念事業の一つとして「日本の機械工学・工業の発展を奨励する」ことを目的に 1958 年に設けられ、毎年、優秀な技術や論文などが表彰されています。『日本機械学会賞(技術)』は、機械工業に関して数年以内に完成した新技術を対象に、独創性・新規性、品質/性能、生産性 向上を通じた経済・社会への貢献などの観点から優秀と認められた技術に贈られるものです。
山形大学大学院有機材料システム研究科/有機エレクトロニクスイノベーションセンターの竹田泰典准教授 (プロジェクト教員)らの研究チームは、印刷型センサを用いたロボットグリッパーの高機能化技術により、2025 年度日本機械学会賞(技術)を受賞しました(〔受賞公表日:2026 年4 月9 日〕)。なお、日本機械学会賞(技術)の受賞は山形大学として初めてとなります。本技術は、印刷プロセスを用いてフィルム上に圧力・温度・振 動センサを形成・積層し、ロボットグリッパーに装着することで、実時間で物体の状態を多面的に評価可能とする触覚センサシステムです。センシング情報は独自開発ソフトウェアによりリアルタイムで取得・解析され、圧力と変位の関係から柔らかさ(硬度)を推定するとともに、温度や微振動情報から滑りや異常把持も検出可能です。
受賞者:竹田 泰典(山形大学)、吉田 綾子(山形大学)、ワン イーフェイ(元 山形大学)、時任 静士(山形大学)、熊木 大介(山形大学)
詳しくはこちら(リリースペーパー)をご覧ください。
従来型のフィルム触覚センサは複数基板の貼り合わせを必要とし、高密度化・量産性・プロセス簡略化が課題でした。そこで本研究では、電極上に直接感圧層を形成可能なカーボン系インクを新たに開発し、印刷・加熱のみで圧力応答性を発現する一枚基板で完結する圧力センサ構造を実現しました。
また、人手不足を背景にロボット活用が進み、協働ロボットや自律型ロボットには、環境変化に対応しながら精密作業を行う能力が求められています。視覚だけでは把持の成否や滑り等を判断しにくく、触覚(圧力・温度・振動)の統合センシングが重要です。AI 活用が進む一方で、その根本には高品質なセンシングデータが不可欠であり、 触覚データの取得基盤の整備が重要課題となっています。
研究手法・研究成果
本研究では、印刷プロセスにより圧力・温度・振動センサをそれぞれフレキシブル薄膜上に形成し、薄さを活かして積層・一体化する構成を採用しました。圧力センサについては、電極上に直接感圧層を形成できるカーボン系インクを新規に開発し、印刷・加熱のみで圧力応答性を発現する一枚基板完結の構造を実現しました。
さらにロボティクス応用では、グリッパー開閉度(MODBUS 通信)と圧力センサアレイ(シリアル通信)を実時間で統合処理する際の通信遅延が物体破損の原因となる課題に対し、センシング回路設計とソフトウェア最適化を重ね、実時間での柔らかさ推定と制御を可能にしました。
本システムは、各センサが印刷法で形成され、厚さ100µm 以下の薄型・柔軟構造であるため、積層してもロボットの動作を阻害せず対象物に追従します。温度・微振動情報から滑りや異常把持も検出可能であり、協働ロボットやヒューマノイドに必要な多様な触覚知覚機能を一体化・小型化して実装できます。
受賞者のコメント
本賞(技術)は、大学においては論文業績に対して授与される学会賞(論文)とは異なり、産業応用に近い技術としての完成度や社会的価値が評価される点に特徴があります。本研究がこの賞を受賞できたことは、プリンテッドエレクトロニクスやフレキシブルセンサ技術が、基礎研究の段階から実用・産業応用へと着実に進展していることの証であると考えています。今後も基礎研究に加え、実証・応用研究を一層推進し、社会実装に向けた技術開発に取り組んでまいります。
今後の展望
本技術は、製造・物流・介護・農業などの現場で、協働ロボット・自律型ロボットが安全かつ精密に作業するための「触覚基盤」としての展開が期待されます。特にAI による高知能化が進む中で、学習・推論の基盤となる高品質なセンシングデータを提供することにより、状況理解の高度化と制御の信頼性向上に貢献します。将来的には、センサの微細化・高密度化により、空間分解能や応答特性の観点で人間の触覚を超える触覚の実現も視野に入れ、より高度な把持判断・技能継承・自律作業へと発展させます。
用語解説
1.触覚三基底:圧力・振動・温度など、触覚を構成する複数の物理量を統合的に触覚を計測する考え方。
2.印刷エレクトロニクス:インク等の材料を印刷・塗布で成膜・配線形成することで電子デバイスを作る技術。 低温・省エネ・材料効率に優れる