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北日本における、南方系マダニ定着の確認~東北地方山形県の野ねずみが宿主動物として機能~

掲載日:2026.05.07

本件のポイント

  • 南方系マダニの幼虫を、東北地方山形県の野ねずみから確認。
  • 雪解け直後の春にも植生上から南方系マダニの幼虫を確認。
  • 北日本において南方系マダニの定着が確認された初めての例だと考えられる。 

*南方系マダニは感染症を媒介する恐れがあるため、その生息状況の理解は重要である。今回確認した南方系マダニDermacentor bellulusは主に野生動物に寄生し、人を直接刺咬する事は少ない。そのため過度に恐れる必要はないが、気が付かない間に自然環境が変化しつつある事を認識する意義はあると考えられる。

概要

国立大学法人山形大学学術研究院(農学部主担当)の准教授、小峰浩隆博士、農学部4年生(当時)の石川慎也氏らは、東北地方の山形県において、南方系マダニDermacentor bellulusの幼虫及び若虫を、森林環境で捕獲したアカネズミから確認しました。また、雪解け直後の春にも植生上から南方系マダニの幼虫を確認しました。この結果は、南方系マダニD.bellulus が当該地で繁殖及び越冬している事を示しています。これは、本種が北日本に機会的に侵入しているだけではなく、少なくとも東北地方山形県の森林環境において既に定着している事を示しています。本研究は、北日本において南方系マダニの定着が確認された初めての例だと考えられます。

論文原典URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2213224426000428

詳しくはこちら(リリースペーパー)をご覧ください。

背景

近年、気候変動や特定の野生動物の分布拡大等に伴って、感染症を媒介するマダニ類の分布拡大が世界各地で問題になっています。例えばアメリカでは、ライム病を媒介するマダニの分布域が拡大し、ライム病の発生地域が広がっています。日本でも、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)等の新興感染症を媒介する恐れのある南方系マダニ類の分布拡大が懸念されています。マダニ媒介性感染症の公衆衛生上のリスクを把握するためには、マダニ類の分布拡大の実態を理解する必要があります。 

最近の研究により、北日本に南方系マダニが進出しつつある事が報告がされてきました。しかし、これまでの研究では、南方系マダニが北方に機会的に侵入したのか、定着したのかは分かっていませんでした。ある地域でのマダニの定着を確認するためには、その地域で産卵し卵が孵化したという証拠となる幼虫の確認が重要です。しかしこれまで、北日本において南方系マダニの幼虫を確認したという例はなく、南方系マダニが世代を繋ぎ定着しているのかは不明でした。南方系マダニが定着したか否かは公衆衛生にも関わる基礎的な情報のため重要です。

研究手法・研究成果

本研究では、東北地方山形県の森林及び都市環境において、2023年7,8月、2024年7,8,11月に野ねずみ類の捕獲調査を行い、マダニ類の寄生状況を調査しました。その結果、7種類55個体の野ねずみ類等を捕獲し、その内、森林環境で捕獲したアカネズミから南方系マダニD.bellulusの幼虫及び若虫を確認しました。また、2024年の雪解け直後の4月に植生上のマダニの採集調査を実施したところ、D.bellulus幼虫を確認しました。これは本種が幼虫あるいは幼虫発生の前段階(卵や吸血後の成虫雌)で越冬したという事を示しています。これらの結果は、D.bellulusが当該地域で冬に死滅することなく世代を繋いでいる事を示しています。本種が北方に機会的に侵入しているだけではなく、少なくとも当該地域の森林環境には既に定着していると考えられます。 

D.bellulus等の南方系マダニは、関東地方以南の西日本や東南アジア、南アジアといった南方地域で広く確認されているものの、北日本で定着が確認された事はありませんでした。今回の結果は、北日本において南方系マダニが定着している事を示した初めての例だと考えられます。

今後の展望

気候変動の進行や野生動物の分布拡大といった様々な要因によって、今後さらなるマダニやマダニ媒介性感染症の分布拡大が危惧されています。しかし、マダニも野生動物も多様な種類で構成されており、それらの関係については未解明な課題が多くあります。今後は、各地域におけるマダニの種構成やその季節変化、野ねずみやイノシシ、ツキノワグマといった野生動物各種との関係、病原体保有状況等について明らかにしていく事で、マダニ媒介性感染症のリスクやその生態学的背景の理解に繋がっていくと期待されます。

図1 調査地の画像
図1 調査地

図2 調査対象種 アカネズミ(Apodemus speciosus)の画像
図2 調査対象種 アカネズミ(Apodemus speciosus)

図3 東北地方山形県のアカネズミから確認された南方系マダニDermacentor bellulus(撮影:小峰浩隆、出典:本論文Komine and Ishikawa 2026 Int J Parasitol Parasites Wildl):a-1幼虫背面、a-2幼虫腹面、b-1 若虫背面、b-2若虫腹面。赤矢印は種、成長段階の形態的特徴の画像
図3 東北地方山形県のアカネズミから確認された南方系マダニDermacentor bellulus(撮影:小峰浩隆、出典:本論文Komine and Ishikawa 2026 Int J Parasitol Parasites Wildl):a-1幼虫背面、a-2幼虫腹面、b-1 若虫背面、b-2若虫腹面。赤矢印は種、成長段階の形態的特徴

研究体制

本研究は、国立大学法人山形大学学術研究院(農学部主担当)の准教授、小峰浩隆博士、農学部4年生(当時)の石川慎也氏によって行われました。本研究は日本学術振興会科学研究費補助金KAKENHI JP21K17917及び環境研究総合推進費JPMEERF20245M02の助成を受けたものです。

用語解説

1.南方系マダニ:関東地方以南の西日本や東南アジア等の南方地域で広く確認されるマダニ類の呼称

本研究成果は、寄生虫と野生動物に関する国際学術誌International Journal for Parasitology: Parasites and Wildlife誌(4月1日付)に掲載されました。
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2213224426000428

論文名:Tick–small mammal relationships in urban and forest environments in Yamagata Prefecture, Japan: First confirmation of the establishment of southern tick species in northern Japan
(日本の山形県の都市と森林環境におけるマダニと小型哺乳類の関係:北日本における南方系マダニの定着の初確認)

著者名:Hirotaka Komine and Sinya Ishikawa(小峰浩隆、石川慎也)

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