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三宅航 人文社会科学部 人文社会科学科 1年

〇このプログラムをとった目的
自分が今回のプログラムを受講した目的は2つある。
 1つは海外経験を得て、自らの行動の規模を広げるためである。今までは海外渡航経験が無かった自分がまだ行ったことの無い場所へ行き、経験を積める。準備から移動まで自らで行うこのプログラムはそのために理想的だった。
 2つ目は新しい価値観を手に入れるためである。学生大使の説明会でもあったが、同じサテライト校に行く山形大学の学生をはじめとして、現地で実際に会う学生など多くの人々と関わるこのプログラムでは多様なものごとの考え方を知ることができる。

〇派遣先:ジョグジャカルタ特別州に関して
自分は学生大使プログラムでインドネシアのガジャマダ大学に、2週間滞在した。
 ガジャマダ大学があるジョグジャカルタ特別州は教育、文化、芸術の街と言われている。教育の面についてはインドネシア国内でも屈指の大学が集まっている。ガジャマダ大学もそのうちの1つであり、学生自身も意識が高い。文化は植民地時代の歴史からも影響を受け、独特の文化ができている。wayangという影絵やgamurangという楽器などをはじめとした芸術も存在する。

 〇日本語クラスについて
 自分は2月22日からガジャマダ大学の日本語クラスに参加した。最初に渡航していた先輩は2月18日からクラスに参加していた。その際は自己紹介をはじめとした内容を一斉授業という形式で教えていたそうだ。そこから徐々に人数が増えるにつれて、内容を分担し教えていた。例えば1人はひらがな、もう1人はカタカナを教えるといった形だ。時分が到着した時は、10人以上の山大生が到着しており、始めてクラスはほぼワンツーマンに近い形式だった。日本語クラスに来ていた現地の学生の数が山大生とほぼ等しかったので成立した。
 現地の学生の日本語能力は非常に高く、もちろん個人差はあるが、日常会話をすでに淡々とこなしていた。しかもそれらの能力はだれかに教わった訳ではなく、自発的に、独学で習得したものだった。加えて彼らにとって日本語は基本的には第3、第4言語である。中には第5言語である学生もいた。彼らの多くは日本のアニメや漫画といったサブカルチャーから日本語に興味を持ち、勉強を始めた。そして日本語の勉強に対するモチベーションはひとえに好奇心から来ている。具体的にはアニメ、漫画の中のキャラクターが話していることを理解したいという思いからだ。
 今回の日本語クラスで自分が現地の学生に教えたことの多くは会話である。日本人など国籍に関係なく、それぞれの国でそれぞれの人間がしているであろう会話を日本語と英語でインドネシアの学生と行った。はじめのうちは、今日は「漢字」をやるというようなテーマを決めてから授業していた。この形式はテーマが決まっているため、授業を進めるのは簡単だが、実際に授業を受ける生徒のレベルはそれぞれバラバラである。彼らが漢字の勉強に使っているツールの1つで「kanji study」というスマートフォンのアプリケーションがある。このアプリは小学生1年生の漢字、小学2年というようにレベルで分けられている。実際に自分で入れてみたが、書き順も正確に把握できて、漢字学習にはうってつけだと感じた。このようなツールを使いながら、質問や解説を加えて漢字に対する理解を深めていこうと考えていた。しかしレベルの差という問題は大きく、漢字を教える予定で教室に行ったが、その時は日本語に初めて触れたという学生を担当する時もあった。レベルの差を最も痛感したのは「文法」についての質問をされた時だ。一人の学生から「~した方がいい」構文に関して質問を受け、こんなに進んだ内容を勉強しているのかと思わされた。その際に教育方法について深く考えた。またこれは後で言及するが、クラス外で活動した時に教育について考える機会があり、それ以降から「会話」というコミュニケーションを重視し始めた。今回訪れたサテライト校のガジャマダ大学の学生はやはりレベルが高い。事前に説明は受けていたが、それでも驚かされた。そんな彼らはテキストがあれば構文、漢字などをすぐに理解できるだろう。ならば自分達がするべきなのは日本語を好きになってもらうことだと考えた。
 それ以降は主に会話から入り、日本語のことを楽しみながら、少しずつ教えるようにした。意欲が非常に高い学生には構文などを教えたが、そこでもコミュニケーションは大事にした。授業自体を楽しんではもらえたようなので、良い効果が出ていると思いたい。

 〇クラス外の活動について
 まず現地のチューター学生との活動について、彼らは土日や放課後の空いた時間を積極的にこちらとの活動の時間に割いてくれた。そのため、たくさんの場所に行くことができた。インドネシアの世界遺産であるボロブドゥール寺院遺跡をはじめとして、王宮であるクラトンなど様々な場所に連れて行ってくれた。中でも個人的に最も行けて良かったと思えたのはフレデベルグ要塞博物館だ。もともと要塞として使われていたが、改修して現在は博物館として使われている。そこではインドネシアの独立までの歴史がジオラマで表現されている。なぜインドネシアが日本と親しい国交を築いているかもわかる。外出の後も日本人の滞在先に来てくれて一緒にカードゲームやお話をして親睦を深めた。
 そして3月2日の金曜日にはガジャマダ大学の施設の1つをお借りして、チューターやクラスに来てくれている学生達をはじめとして、多くの学生達と親睦を深めるためのパーティーを開いた。パーティーでは山形や山形大学の紹介やミニゲームを行った。
 そして自分が日本語教育について深く考えるきっかけになったのも学外の行動の1つだ。自分が日本語クラスで担当していた1人の学生が、課外で日本語クラスに行っていると言っていた。クラスに来ていた学生の何人かはそのクラスに行っているとのことだった。ある放課後、自分も彼らにクラスに連れて行ってもらった。そこではガジャマダの日本語学科で講師をしていた方が、引退後に個人的に授業を行っていた。クラスはほぼ自習に近く、質問があれば先生に聞くという形だ。自習以外では日本語の音読を制限時間を定めて読むというものや、文化を知るために書道やかるたなどがあった。生徒の意識は非常に高く、質問も多かった。そして教室の教材も豊富だ。加えて彼らは日本語の問題の話し合いもしていた。個人的には勉強とは一人で行う側面が強いものだと考えているが、コミュニケーションを含んだ活動は勉強になるとも考えている。そこの先生に教育の本質を聞いたところ、個人学習であるそうだ。コミュニケーションを使った学習はあくまで個人学習の延長線上だと思う。その点、クラスはかなり理想的だと思った。ただあの教室は環境が整っており、学生自身の意識が高いため成立している。日本語クラスを運営するにあたって、言語教育について考える最良の機会を得られた。

 〇目的の達成度とまとめ
まず目的の1つ目、行動の規模に関しては滞在中から拡大していると感じていた。課外の日本語クラスに行ったこともその目的を考えていたために実現できた。またトランジットの時も日本人の方とお話する機会も得られた。
 2つ目の新たな価値観についても、多くの学生と関わることで得られるものは多かった。現地での文化からだからこそ得られることもあった。また山大生の先輩たちからも学ぶこともあり、同時に自分のものごとへの考え方の傾向も知ることができた。しかし、価値観を知った時、自分ならこうするという固定観念も少なからず持ってしまった。今後は自然に受け入れていく姿勢を持ちたい。
 今回のプログラムは自由度が高く各々の目的に沿った活動が可能である。そのため目的を持って参加すれば、何らかの答えには近づけるだろう。実際に2つの目的はかなり成果を出せた。また、そこまで深く考えていなかった言語教育に関しても考えるきっかけになった。