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松田比奈 地域教育文化学部 異文化交流コース 3年

派遣期間:平成28年8月11日~8月24日(14日間)

日本語クラスでの授業内容
 VNUAでは、月曜日・金曜日はコミュニケーションクラス、火曜日・木曜日はビギナークラスと分けて日本語クラスがあった。午前は9時~10時30分、午後は3時~4時30分だった。しかし8月前半はちょうどベトナムの大学は夏休みで、学生の数がとても少なく、特にコミュニケーションクラスのときは学生が1人や2人だけのときがあった。ビギナークラスも、学生の数は多くて10人ほどだった。
 ビギナークラスでは、ひらがなから始めた。私が書いた字を一生懸命に真似してノートに書く姿や、元気よく声を出して発音の練習をしてくれる姿が印象的だった。ひらがなが終わると、次は挨拶言葉や自己紹介、数字の言い方等を教えた。「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」のように、日本語には時間帯によって挨拶の使い分けがあることを教えると、ベトナム語ではそのような区別はないと言われ、日本語との違いに驚いている様子だった。自己紹介は、例文を決めて何度も練習し、一人ずつ前に出て発表してもらった。何度も読み練習をしても、学生たちにとって「よろしくお願いします」が難しいようだった。
 コミュニケーションクラスでは、歌詞を書いたプリントを配って意味を説明しながら歌を唄ったり、折り紙をやったりした。また、別の日には学生から「漢字を勉強したい」というリクエストがあったため、「家族に関する漢字」とテーマを決めて、「母」「父」「兄」「姉」「祖父」…等の漢字を教えた。その際、「書き順も!」と学生から言われたことが印象に残っている。
 VNUAの授業では、他のサテライトと違って英語があまり通じない学生が多く、授業の説明やコミュニケーションを取るのに非常に苦労した。昨年度のサマープログラムで知り合ったハンちゃん(今は大学で働いていて、ベトナム滞在中に私たちの全てのサポートをしてくれた)が、授業中にベトナム語で助けてくれた。コミュニケーションクラスのときには、なるべく日本語のみを使うようにしたが、そのような方針を取った理由としては、例え100%自分が言っていることを理解していなかったとしても、なるべく学生が日本語に触れている時間を長く作りたかったからだ。しかし、ビギナークラスでは日本語はもちろん通じない上に英語もほとんど通じない状況で、教えたいことはたくさんあってもそれを上手く伝えられなかったことが悔しかった。
 また、大学の授業の合間を縫っての日本語クラスということで、毎日同じ学生が授業に来てくれる状況ではなく大変だった。前の日にやった授業内容を踏まえて次のことを教えることができない日も多く、毎回の授業でそれぞれの学生のレベル確認をすることにどうしても時間がかかってしまった。山形大学生側の人数が多ければクラスを分けるという形式も取れたはずだが、少ない中でいかに効率よく授業を進めていくか、もう少し良い方法があったのではないかと思い、残念だった。

日本語教室以外での交流活動内容
 授業が終わったあとや、休みの日は、いつも日本語クラスの学生や国際交流担当の事務所の方々と過ごした。ハノイ中心地の観光地やショッピングモールへ案内してくれたり、カフェで美味しいものを食べながらおしゃべりをしたり、2週間のハノイでの大学生活を満喫することができた。また、何人かの学生は自宅に招待してくれて一緒にご飯を食べることもできてすごく嬉しかった。特に、ベトナムの家庭料理の焼き春巻きを一緒に作ったことが思い出に残っている。夜には突然「いまから来ないか?」とメッセージが来たこともあり、日本語クラス以外の学生の友達もたくさん作ることができた。ベトナム式の乾杯が、とても面白かった。彼らとは帰国してからもよくメッセージのやり取りをしており、ベトナム人の温かさを感じた。

プログラムに参加した感想
 中国・インドネシアに続いて今回のベトナムが3回目の学生大使派遣プログラムの参加だった。いつも素晴らしい出会いと気づきがある海外サテライトで、今回もたくさんの新しい経験ができたことを嬉しく思う。日本語を教えることには大学入学以前から興味があって、様々な日本語教育関連の授業を受けて知識と教授方法を蓄えていたつもりだった。しかし、実際に外国人日本語学習者に日本語を教えるときには、自分では思いもつかなかった質問をされることがあって、母語話者ながら明確に答えられず、まだまだ自分の日本語の知識不足を痛感した。しかし、今回の経験を通して、「将来は日本語教師になりたい」という思いがより強くなり、漠然としていた夢が、自分の中で絶対に叶えたい夢に変わった。自分が教えたことを一生懸命にメモしてくれる姿や、教えた言葉を使って日本語で会話をしようとしてくれる学生たちの姿を見ていると、本当に嬉しかった。2週間は本当にあっという間で、仲良くなったみんなと別れるのは寂しかったが、また必ずハノイに行きたいと思っているので、その日まで自分も新たな目標に向かって頑張りたい。

プログラムでの成果
 今回のプログラムでの大きな収穫は、英語力を含めたコミュニケーション力が伸びたことだ。受け入れ担当だった事務局のLucさんとは日本語が全く通じず、2週間毎日英語で会話をした。今まで訪れた国では、すぐに日本語ができる学生に頼ってしまったり、日本語ができる先生とは日本語で会話をしてしまったり、自分の姿勢の問題もあったのだが、海外でも英語を話すことは少なかった。しかし今回は、必然的に英語を使わなければいけない環境で、今までずっと感じていた英語に対するコンプレックスや苦手意識は無くなった。間違いを恐れずに積極的に英語を話す姿勢が大切だと感じた。
 ベトナムの歴史や文化を肌で感じることができたことも大きな成果で、8月後半はベトナムにとって記念日が多く、独立記念日の9月2日に向かって街中に並ぶ国旗も増えているようだった。さらに、最初に会った人には必ず年齢を聞かれたが、これは学生の話によると、ベトナムでは学年よりも年齢を重視するからだそう。どんなに仲が良くても年上には丁寧語で会話をすること、家族にも丁寧語を使うことを知ったが、これはおそらく儒教の影響があると思った。お店や家庭には仏壇があり、様々なところで中国的な装飾やお正月飾りがあり、バスで年上の人がいたら若者はサッと席を譲る。このようなことは実際に自分がベトナムを訪れて初めて知ったことであるが、おそらく観光旅行では知ることができなかった。学生大使としてハノイの大学周辺の街や学生と密に繋がることができたからこそ、学べたことだっただろう。

今後の展望
 今回の経験から、「日本語教師として海外で活躍する」という将来の選択肢が自分にプラスされた。自分が知らない土地へ行き、そこで出会った人々と交流することが自分にとってはすごく楽しい。今後も、どんどん積極的に海外へ出ていき、新しい価値観と広い視野を取り入れていきたい。また、今回出会ったベトナムの人々との連絡を続け、この素晴らしい出会いを無駄にしないようにしたい。そして今、英語に対するモチベーションが非常に高まっているので、日本にいてもこのモチベーションを保ち、次の場所でのコミュニケーションツールとして自由に扱えるようになりたいと思う。

日本語教室に通うトァンくんの自宅にての画像
日本語教室に通うトァンくんの自宅にて

日本語クラス集合写真の画像
日本語クラス集合写真

ホーチミン資料館の銅像前での画像
ホーチミン資料館の銅像前で