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大崎教授の海外駐在記「延辺大学駐在記(2)」

 新学年は9月の第1週に始まり、6月に卒業式があります。私が赴任した7月は、在学生には試験と補講の季節でした。しかし、8月に入っても、学寮には多くの学生が滞在していました。新2年生に帰省禁止令が出ていたのです。本来、夏休みは学寮の使用は禁じられており、学部長の推薦で特別の入寮許可書を持つ 学生だけが滞在を許されると聞いていたのですが、今年は9月3日に朝鮮自治州創設60周年記念の行事が、新設された州立運動競技場で行われることになっており、新2年生はそのマスゲームのために夏休み返上で、文字通り、朝から晩まで練習に駆り出されていたのです。学寮から運動競技場までは車で15分程度で すが、20数台のバスが、朝食後に出発し、昼食に戻ってきてまた出発し、夕食に戻ってきてまた出発して、夜遅く戻って来ました。学生たちは嫌がっていましたが、学年末試験免除が特典でした。

 8月の半ばに新1年生が着飾った両親と一緒に集まり、入寮しました。この日は大学内の食堂やスーパー・マーケットの周辺には、テントが張られ、幟が立ち、幕が張られ、通りには虹色のアーチが設置され、一日中、賑わいが絶えませんでした。しかし、翌日、新入生たちは迷彩服に着替え、朝、昼、晩、土日もな く、3週間の軍事訓練に入ったのです。まず、赤い学科旗を先頭に行進の練習です。行進は学内だけではなく、学外でも行われていました。指揮官は上級生達のようでした。行進練習の後半は、号令一下その瞬間の動作で止まる、という訓練も行っていました。その後は武闘訓練で、空手の型の集団演武みたいなことをしていました。

 8月後半の食堂とその周辺は、マスゲームの華やかな衣装を纏った2年生と、迷彩服を着た1年生が溢れ、夕靄込める夕食後は、夜間練習、夜間訓練前のひと時を、路上にパッチ状に群れて座り込む彼らの姿がありました。

 9月3日に、運動競技場であった式典には、日本からは福田、村山の元首相が出席した、という噂がありましたが、一般市民はテレビでの見物でした。主賓は 元延辺大学副学長で国務院副総理の張徳江氏。私はその前日の最後のリハーサルの全席指定の入場券を手に入れることが出来ました。外国語学部副学部長日本語 科主任の全永男先生が手配して下さったのです。しかし、マスゲームとはテレビで見るものです。

 9月7日朝、キャンパスに近づくと、勇ましい音楽が聞こえてきました。学内の運動場の周囲に張られた金網のフェンスに、多くの人々が張り付いていました。運動場の観覧席中央の前に銃剣を持った儀仗兵が並び、中央に野戦服を着た司令官が立っていました。その前を、学科旗を先頭に、銃剣を肩に担いだ学徒兵 たちが行進して来ては、銃剣を捧げ持ち、通って行きました。そのたびに、観客からは大きな拍手が沸き起こっていました。その後に武闘演武が続き、私は見るのに疲れてその場を去りました。

 東大に12年間滞在した、という朝鮮族の先生が「あれは、入学に先立ち、新入生に礼儀作法を教えているだけだよ」と言っていました。

マスゲーム会場へのバス輸送と軍事訓練、後景は文科系校舎群の画像
マスゲーム会場へのバス輸送と軍事訓練、後景は文科系校舎群

軍事訓練最終日の画像
軍事訓練最終日