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大崎教授の海外駐在記「延辺大学駐在記(追記)」

 9月24日に中国を離れ、昨日で2カ月たちました。今、この文章をケニアのジョモ・ケニヤッタ農工大学で書いていますが、昨日、日本政府の内閣府が発表した「外交に関する世論調査」によると、「日中関係が良好だとは思わない人」が92.8%、「中国に親しみを感じない人」が80.6%とありました。尖閣問題で、中国政府が口を極めて日本を罵り、軍部の高官が武力を背景とした恫喝的な言辞を吐き、経済制裁を試み、日本企業に対する破壊的な官制デモがテレビで流されるのですから、無理もないことだと思います。山形大学からの短期交換留学生の一団も、出国予定の前日に、延辺大学の学長から無期限延期の要請を受けました。日中交流の各種の行事も、中国側からの中止要請が相次いでいます。

 このような状況で、今後の山形大学と延辺大学との交流をどうするか、という大問題があります。私は延辺大学滞在中に嫌な経験は何一つしませんでした。逆に、随分と多くの人々の好意を受けました。人々の考え方も、目指す方向性も、私たち日本人と、基本的には何ら変わることはありません。ただ、統治形態があまりにも違い、そこで日中間の齟齬が生まれていると思いました。今後に対する私の考えは、帰去来の辞、ではありませんが、帰国の際に、延辺大学の諸先生方に発したメイルに書き尽くしてあります。このような時期だからこそ、短絡に走らずに長期的な展望に立った知的な交流が必要だと思います。

拝啓、延辺大学の諸先生方

 私は7月2日から貴大学に滞在していましたが、9月24日に帰国します。この間、私や私の家族、犬のピースが、皆様に大変にお世話になったことを、心よりお礼申し上げます。

 私の任務は、貴大学と山形大学の友好的な交流を促進することでした。これは、山形大学が、グローバル化時代に貢献できる人材を育成したい、という思いで始めた事業の第一歩です。グローバル化時代に貢献できる人材とはどのような人材なのか、私の考えでは、自分の考えだけに捕らわれずに、異なる国の人々の立場で物事を考え、理解し、対応できる人材だと思います。その意味で、8月に貴大学から10人の学生に山形大学に来ていただいたのは、とても良い機会だったと思います。しかし、9月に予定されていた、山形大学から9人の日本人学生と、1人の韓国人学生、1人のベトナム人学生が、貴大学を訪れるプログラムが、不本意な事情で延期されたことは、大変に残念でした。しかし、雨降って地固まる「不打不成交」という諺があります。貴大学と山形大学の友好関係がますますと固くなることを期待しております。

 私個人としては、様々な良い思い出ができました。特に印象的なのは、貴大学の外国語学院で講義をする機会を得たことです。講義を聴く学生たちの真剣な眼差し、的確な質問、そして何よりも、その後、構内のいたる所で、多くの学生たちが私に挨拶をしてくれるようになったことです。これだけ知的で礼儀正しい学生が存在している貴大学に対し、私は尊敬の念を禁じえません。

 日々目覚ましく発展する延吉と、延吉の誇りとして存在する貴大学の益々の発展を祈っております。

2012年9月22日

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夜の大学正門

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